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[コメント] 櫻の園(2008/日)

旧作『櫻の園』を撮り、さらに関連作『苺の破片』を手がけた中原俊にして、この作品を単なる二匹目の泥鰌とは絶対に呼びたくない。彼の『櫻の園』への愛情は本作からも充分に汲み取れるものだ。チェーホフの「櫻の園」に等しく、これはヴァージョンを変えての「再上演」とされて然るべきものである。
水那岐

爽やかな青春を二時間以内に封じ込めるなんて、およそ常人に出来た作業ではないし、この作品も決して傑作と呼ばれるべきものではない。しかし、その欠片を部分的に綴るということさえ凡なる映画クリエーターの手には余る作業であることは、誰しもが認め得る事実ではないか。中原の愛情は、この作品にもきちんと込められている。

比較論で閉めるのは些か卑怯とは思うが、許して欲しい。素人のデモシカ作業が思いがけない栄光に繋がる物語を、ここ数年自分達は飽き飽きするほど観させられてきた。それに対しここには栄光も何もない、結果すら描かれることはないのだ。甲子園を筆頭とする絶対勝利主義の悪癖と自分は勝手に考えているのだが、何、自分達さえ満足できればそれでいいのだ。だからそれは「破片」の綴れ織りとなる。それこそは『櫻の園』のツボなのだ。それゆえに、それがきちんと描かれている作品はアイドル映画だろうと何だろうと問題ではない。

だからこれは冗談ではないレベルの「青春映画」なのだ。

(評価:★4)

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