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[コメント] 鉄人28号 白昼の残月(2006/日)

ケロイドのように、その戦闘で蒙った無残な容貌を露わにしながら、なおも第2次大戦を引き摺る者達との戦いを強制される鉄人。その姿はこの映画で始めて彼に触れる観客には、些かショッキングを通り抜けて悪趣味ではないか。
水那岐

確かに画面、会話、音楽など名スタッフの手になる作品への期待を裏切らない映画ではある。しかし如何せんロボットの扱いが悪趣味すぎる。ホンモノの人間なら血の濁流がほとばしっていたであろう、敵ロボットの惨殺。そして鉄人自体はあたかも、『はだしのゲン』の被爆者を連想させる恐ろしい外観にさせられる。これが日本の「戦乱の季節」を体験させるための演出であることは理解できる。しかし同時に、「過密着」との思いを抱かせたのは事実であり、それが本来の『鉄人』というエンタテイメントからかけ離れていたのではないのか、との印象を残した。

「おたかさん」など画面に明るい効果を加えたキャラがいたことがせめてもの救いだろうが、全体に重苦しい空気の残る作風は、自分の趣味ではなかった。よもやこの作品を「戦争を考えさせるためのテキスト」とは監督以下誰も思ってはいまいが、それでもこの作品の中途半端な時代描写は、やはり好きになれなかった。

娯楽作である。原作者の意図から外れた暴走は自重されたい。

(評価:★3)

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