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[コメント] イブラヒムおじさんとコーランの花たち(2003/仏)

オマー・シャリフがいい歳のとり方をしている。悪童に説教を垂れず、自分の恥ずかしい側面を隠さず、かといって子供をワルの道に引きずり込むでもなく、彼は何恥じることもないムスリムなのだ。イスラム教に悪い印象を持っている人に騙されたつもりでこの映画を観てもらいたい。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







このサイトで、目玉にタコができるほど「私は無宗教だ」といかにもそれが仕方ない事のように告白する文章を目にしてきたけれども、そんな人でも、こういう爺さんが自分を育てた親父の言葉のように、身のまわりに宗教を纏わりつかせているのを胡散臭く思うことはないんじゃなかろうか。

シャリフの生き方は良きムスリムのそれとは決して言えないだろうが、最後に自分が踏み出してはならない道を覚えておくために、彼はイスラムの教えを大切にしているのだろう。シャリフは主人公にコーランを与えるが、「そこから学べ」とは一言も言わない。それは彼が、世界をより愉しく渡っていくための知恵として、教えを「使って」いるからだと思われる。だから押し付けがましさは微塵も存在しない。彼が最期まで笑顔を絶やさなかった(実際、いい顔に撮れているのだ。カメラの自然な撮りまわしがその効果を倍加させる)のは、その緩やかな生き方のためでもあるだろう。

平均的アメリカ人は「あの日」以来、一種ムスリムを恐ろしい存在のように思っているようだが、こんなさりげない生き方をしたムスリムの話も知って欲しい…そんな気がする。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)りかちゅ[*] Orpheus 桂木京介

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