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[コメント] カビリアの夜(1957/伊)

もうこれ以上は、何も失うものがない。
booca

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







そこまで自分を追い込んだ弱さと、それでも生きるために 歩をかみしめるラストの強さ。

持っていたすべてを奪われ、何を学ぶのだろう?

カビリアの弱さは無知というよりも、優しさだったと思う。 愛されたいために、人を信じたかった。 裏切られても、信じ抜きたかった、与え続けたかった。 そして同じことを繰り返す優しさは、カビリアの強さでもあったと思う。

ついに家も売り渡し、親友にも別れを告げてしまった。 「いつか」がやっとめぐって来た事で、今までのすべてが報われたと思った。 だからこそ一つのためらいもなく、すべてを手放して喜んだ。

カビリアは「いつか」を期待してはいけないことを、 いつまでも知りたくなかったはずなのに。 彼女の望んだことは、ささいな願いであったはずなのに。 家も最後の期待も失い、ついに「次はもう騙されない」と決意するよりも、 それでも「いつか」を信じ、愛されたいと信じ続けて生きていく方が、 よっぽど強い。けれど、難しい。

愚かさと、愛しさ。

(評価:★5)

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