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[コメント] ベトナムから遠く離れて(1967/仏)

時代背景に少し疎かったのを後悔した。もっと歴史を知っておけばよかった。
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それでも映像や語りである程度理解できるようにはなっている。とても考えさせられる。鑑賞後、早速ベトナムについての本を読んでしまったほどだ。退屈な部分もあったが劇映画ではないのだから仕方がないだろう。

ゴダールの部分が出色。というか、ゴダールの作品は大嫌いなのだが、この作品は別だった。ゴダールの作品を観るのならば元も先に観る必要があるだろう。なぜ彼が様々な作品でベトナム戦争に触れるようになったかが分る。彼は「自分が出来るのは映画を作ることだ。そしてそこでベトナムに触れることだ。」という。そして「パリはベトナムからは遠い。でもベトナム戦争が自分達にどう影響しているのか、自分達とどう関わっているのかを考えるべきだ。」と言う。うんうん。納得。戦争など遠い場所で起こっていて自分とは全く関係ないと思っていても、やっぱり関係している。自分にどう関わってくるのか考えるのは重要だと思った。

それからデモのシーンが結構長く挿入されるんだけど、これは嫌いだ。大人数が集まって政治活動を行うこと自体に強い欺瞞を感じる。それは、政治デモというよりもむしろイヴェント化し祝祭化されているように感じる。彼らは逆に戦争からどんどん遠ざかっていっているように見える。彼らの熱さ。この熱さが信用できない。彼らの怒鳴り声が逆に嘘臭く見えてくる。そして、見境を失いつつある彼らを見ているととても現地のベトナム人や徴収された米兵に対し礼を失したことしてるのだなと思う。この映画に記録されている人々よりも『いちご白書』の登場人物のほうがずっと信用できる。

ゲリラの指揮者についてインタビューする個所もあった。これも余り賛成ではない。確かにゲリラは披搾取階級の最後の手段なのは分る。革命成功後、政権を獲るのは大抵軍人で、そういった軍人による政権は得てして腐敗が激しかったりして巧くいかないものなのではないかな。宗教的指導者もそうだけど「だれも好きで暴力に訴えたいわけではない」というセリフを吐く指導者が一体どれほどの人間を死地に追いやったことだろう?まあ色々複雑なのだろうけど。

それから反戦抗議で焼身自殺した人の妻が出てくるシーンがあった。これは誰がなんとい言おうと気持ち悪い。夫の死を知ったとき、彼女は平然としていたというのだ! 曰く「私は夫の意思を知っていました。誇りに思う。」やめてくれよ、と思う。ラディカル過ぎるにも程がある。何かのために自ら死ぬ、というのは自爆テロや神風のような極限的洗脳状態にあるわけで普通の一市民としてはいささかヒステリック過ぎる。この妻には子供が何人かいるのだけれど、やっぱり子供にも考えを植え付けていくのだろうな。これも現地で戦闘している両方の人々に対しとても失礼だ。だって実際に戦闘に加わっていれば死ぬ自由も生きる自由もないのだから。仮に自分が兵士だったら「俺の代わりにお前が死ねよ」と思うだろう。

兎も角、戦場にいる人間と本国にいる人間とには深い深い隔たりがあるのは分る。まあ、戦争から自分自身遠い位置にいるし、歴史も政治も特に詳しくないのでなんともいえんが、とにかくこの映画では色々考えさせられ興味も少し湧いた。それだけでもこの映画の収穫となるだろう。

(評価:★4)

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