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[コメント] 華麗なる賭け(1968/米)

ザ・スタイリッシュ。
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邦題に偽りなし。本当に華麗な映画だ。恐らく「華麗なる・・・」と題されたいくつかの映画の中でも最も華麗なのではないだろうか。ここまでセンスが良いと思った作品は久しぶり。

この映画の素晴らしい点は俳優のかっこよさと映画自身の作りのスタイリッシュさという2つの魅力を兼備していること。どちらか一方だけ出来が良い映画ならいくらでもあるはずだ。ところが本作のようにいわば次元の異なった要素を両者成功させ併せ持つ映画は珍しい。食事しに行ったらメシも美味かったしウェイトレスも美人だった・・・みたいな感じか・・・。

具体的にいって、まず映画そのものの格好よさ。オープニングの銀行襲撃のシークエンス。ここで目を釘付けにされ心を鷲掴みにされた。画面がいくつもに分割される手法が最高にセンスの良さを感じさせる。観ていて非常に斬新(『大空港』以外では記憶にない)だし、テンポをこの上なく滑らかにさせる効果があるだろう。これはいわゆる奇策の部類に属するのだろうが、巧く利用すれば新鮮な画面作りに寄与できることを実証している。劇場で観るべきだったと少し後悔した。

それとフェイ・ダナウェイ相手にチェスをするシーン。ここの尋常でない緊張感といったらない!表面的にはチェスでしかないはずなのに、2人の心理的駆け引きが見事にカメラワークや編集で表現されている。巧い。

更にいえばその直後のキスシーン。ラブシーンの視覚化回避(この時期では露骨なシーンはまだかなり少なかったはず)の方法が不自然さを感じさせず巧かった。真面目な話、キスシーンからラブシーンの移行できわどいシーンを回避せねばならないとき、どれだけ自然に行えるかは監督の能力を反映する一つの要素だと思う。

それ以外にも車や軽飛行機のシーンなども見逃せないものがてんこ盛りだ。

序盤の演出があまりにも流麗な出来だったので、この映画自身の力によってマックイーンが消されてしまうのではないか、彼の影が薄くなってしまうのではないかと要らぬ心配が心に湧き上がってきた。一応マックイーン目当てだったのだ。が、そんなものは杞憂に過ぎなかった。映画の質にに負けず劣らず、彼も格好よかった。ごみ箱から袋を出していても、なにやっててもサマになる。やはりスターは違う。

こんな2つの魅力によって(それと音楽で)「合わせ技」で私は見事に一本とられましたね。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus kinop[*]

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