コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 月光の囁き(1999/日)

「間合い」は大切。(2011.8.10)
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 「間合い」を取り戻す映画、である。それは、冒頭のセリフでもはっきりと示されている。「面入れられるのが好きやっ!」のほうに着目するのもそれはそれで面白いけれど、ここで言いたいのは、「剣道は間合いやっ!」のほうだ。

 少年の永遠の片思いのはずが、少女からの突然の告白で、晴れて恋人同士となる。すぐに少年が気がつく、なんかおかしい、こんなはずじゃなかった、と。ここから全てが狂い始める。物語は、一度狂ってしまった間合いを二人が新たに探り直す、そのプロセスを、そしてそのプロセスだけを丹念に追う。ベタベタした馴れ合いもドロドロした引きずり合いも一切画面上から排除してみせた(ジメジメとした性欲はたっぷり残してあるのでご安心)、稀有な恋愛映画である。その果てにたどりついたお互いにとって落ち着く間合いが、病室に見舞いに訪れるなり「のどが渇いたなあ?」などという、どこかでなにかを決定的に間違えてしまったとしか思えない関係であったとしても、第三者をも巻き添えに探り合った末のその間合いはやっぱり嘘ではない。美しいかどうかはともかく。忘れがたい一作。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。