[コメント] シャイニング(1980/英)
キューブリックの映画は白い。圧倒的なまでに白い室内、それが怖い以上に恐ろしい。本当に恐ろしい映画。
白いと言うのは、実際壁や床が白い場合もあるが、そうではなく画面全体が白い。画面の中が白い空気の別世界なのだ。
もちろん色もあれば、飾りもある。画面は色彩豊かだ。それなのに自分には恐ろしいほど「白い」のだ。
何度と無く登場する部屋、廊下すべてがひたすら「白い」。室外の白い雪よりも室内の方が遥かに「白い」。
理屈では到底説明できそうに無いが、これがキューブリックの映像というものに凄さなのだろう。
画面が切り換るたびに、目に映るその「白い」室内とその中にポツンとある人影が底知れぬ恐怖と孤独を痛感させる。
確かに原作をイジったというだけあって、超能力、亡霊、狂気の混在が不調和にも思えるが、そんな事を気にする余裕の無い演出。実に巧い。
『2001年宇宙の旅』では、その「白」によって見る者を圧倒的な宇宙の空気の中へと包み込ませていたが、今作ではその「白」は始まりから終りまで潜む狂気の存在を我々に伝えていたのだ。
キューブリックは本当に恐ろしい映画人であった。
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