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[コメント] ニックス・ムービー 水上の稲妻(1980/スウェーデン=独)

現実とフィクションが混乱する作品世界にめまいを抱く中、その中心に見えてくるあまりにもリアルな死に吐き気すら感じた。恐ろしい映像体験。見終わってからのしばらくもそのめまいと吐き気がなかなか消えなかった。
HW

「あの巨匠だから」とか「ファンだから」とかではなく、単純に一人の人間の死が迫っている様が不快なほど恐ろしく、後半は画面に映るニコラス・レイの顔を直視するのが大変だった。ヨボヨボの姿で、激しく咳き込み、何度も大声で呻き、呟き・・・死期の迫った彼の姿はどこからが演技でどこまでが現実だったのか、それは全く分からないが、この映画には誰の目にも明らかに演技では不可能なものが漂っている。そして、それはヴィム・ヴェンダースの側にもあり、彼の苦しみ、悲しみ・・・そういった感情が痛々しいほどに伝わってくる。

そういうわけで、とっても辛いし、怖いし、重いし、不快な映画。突っ込んで言うとこの作品を見ていた時の、そして見終わった時の気分は、普通に映画を見た時の気分とは少し違った。この作品はまさに映画として禁じられた領域に踏み込みかけているだろう。「この撮影を続けるべきか」という製作者側の迷いは無理もない。かのエリア・カザンは死に瀕した友人にカメラを向けたこの作品に激怒したらしい。採点は非常に難しい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ギスジ[*]

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