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[コメント] 夏へのトンネル、さよならの出口(2022/日)

作画リソースが貧しいのに「最近のラノベで新海っぽいアニメ作れよ」という企画、どうするか。
ペンクロフ

アニメ制作はホント大変らしいので、省力は重要なテーマだ。集めたアニメーターたちが何を描けて何を描けないか。難しいシーンを誰に振るか。力不足の若手にはどんなシーンを振るか。作画をなるべく省力化できるように考えてコンテを描かなくてはならない。リソースの貧しさを誤魔化す方法は様々だ。レイアウトと背景は写真をベースに作る。人物を動かせなくてもキャラの顔は作監修正でキメる。目を惹くCGも助かる。他にもまだまだあるだろう。

今作から推測できるのは、なるべく枚数かけず動かさずレイアウトで見せる(もたせる)コンテであること。まあ言うほどレイアウトがキマってるわけではないが、とにかくキャラに難しいことをさせない。走るキャラの全身のフルショットは非常に難しいので、極力避ける。走る顔、走る足などに分割する。人物が食事をする場面も避ける。ものを口に運んで食べてムシャムシャなんて絶対にダメだ。それだけで比較的うまいアニメーターが1人かかりきりになってしまう。

新海先生の『君の名は。』でヒロインが走る(そして転ぶ!)場面なんて、スーパーアニメーターの安藤雅司がいるからできることなのだ。あれを描けるアニメーターはやはり希少なのであって、この作品ではできない。だから顔や足の寄りにカットを割るか、全身は短い秒数にしてアラを隠す。この映画、走りの省力化はよくできてると思った。ただ、食べる作画を避けるのはうまくいってない。オヤジは寿司を食べない。サンドイッチが出てきても食べない。極めつけはオムライスで、そりゃもう延々と食べない。一応そういう(食べたくない)芝居にはしてるんだけど、要するに描けないからでっしゃろと思っちゃうなあ。シーン終わりでヒロインはなにか食べるんだが、すげえ引いたロングショットだ。あの手この手、なりふり構わぬ工夫でリソース不足を乗り越える。リミテッドアニメの歴史だよな。

今作にはこのような作り手の苦闘が見えて、なかなか面白かった。お話は、いやーあんまりピンときませんでしたが…  成功した漫画家のヒモになりたい願望はなくもない…

(評価:★3)

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