コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 怪談佐賀屋敷(1953/日)

入江たか子の化け猫第一作だが、戦前からの蓄積で化け猫映画のスタンダード(お約束)がすでに完成している。ワンカットで化け猫へ豹変する特撮は驚異的だ。
ペンクロフ

驚異のワンカット変身、たとえば赤の化け猫メイクに赤い照明を当てて赤を見えなくさせておいて、照明を切り替えることでメイクが可視化され、化け猫への変身を表現したのだろうと言われている。白黒映画だからこそのトリックで素晴らしいアイデアだと思うものの、中盤の浪花千栄子、クライマックスの入江たか子の凄まじい名演があってこその名場面だろう。大女優がきわもの映画に捧げたこの真剣、この情熱は本当に胸を打つ。

浪花千栄子に操られる遺体の凄まじいアクションも本当に素晴らしい。ゾンビもキョンシーもない時代の「意志なき死体」の表現として傑出している。浪花千栄子は4年後の『蜘蛛巣城』で妖怪ババアを演じる。思えば『蜘蛛巣城』における幽霊の描き方なんか、納涼怪談映画そのものだ。時代を超えて評価される黒澤映画も、実際は同時代に流行した娯楽作品の文脈のうえで作られている。黒澤は浪花千栄子に妖怪ババアやらせて絶対大喜びしてたに決まってるのだ。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。