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[コメント] ターミネーター3(2003/米)

前作と比較すると劣るのは仕方ないが、その前作のプレッシャーの前にこれだけの作品を撮り上げた事はかなりの物だろう。 2003年7月18日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず評価すべきなのは、前二作のプレッシャーを感じながらもこれだけの作品を撮り上げた事。

前二作は映画史に残る名作アクションで、根強いファンを今でも残す。当の俺自身もファンである。そのターミネーターの続編をキャメロンが監督しない、と言う事実を知った時、俺を含め、『ターミネーター』シリーズファンの人は嘆いたに違いない。そして、『U-571』と言う(俺的にはイマイチの)作品の監督、ジョナサン・モストゥがこの大役を務める事となった時、俺の中の不安は最大限に膨れ上がった。

しかし、『ターミネーター3』が一般公開され、ネットで見る感想は「意外!」だとか「予想外に面白かった」と言う感想ばかりで少々安心した。しかし、やはり不安は拭い去れないまま劇場に足を運んでみたのだが、不安を爽快に打ち砕いてくれた。正直、見る前は批判する気満々であったが、見終わってこの映画を批判するべきではないと気付いた。

この映画は偉大な前二作のファンに対するサービスで成り立っている。新しい敵役に女性ターミネーターを配した事に不安があった。何しろその機能だってT-800風の内骨格にT-1000風の外骨格(?)と言う、明らかにT-1000に劣った機能性なのだから。他の機能も何か満足に使い切っていない感じも残った。だが、冒頭のシュワの登場シーンでやられた。なんと言う展開!なんと言う衝撃!この1シーンで俺は持っていかれたね。ここまでファンサービスしてくれるとは・・・。

が、しかしこの映画、編集が下手糞なのだ。序盤から中盤にかけて行われる、新型ターミネーターお披露目と旧型とジョンの出会いからカーチェイスまで、やっている事は超重量級で、且つ迫力も凄い物であった。だが、アクションがどれだけ凄い事をやっていようと編集がメチャクチャなので、今何をやっているかが把握し辛い箇所が多々あり、がっかりさせられた。他にもクライマックスの肉弾戦や他のアクションシーンでも色々その様な編集がずさんな箇所が見られ、アクションシーンを台無しにしている。しかし、それでも脚本等の頑張りで十分次第点以上に相当する物ではあるので許容範囲ではあるのだが・・・。

しかし、この中盤までは正直言って面白くなかった。脚本に特に捻りも無く、ターミネーターはジョンの命令に従わず、一作目の冷酷な殺人マシーンでも、二作目の優しいおっさんでも無い別のマシーンと言う感じが漂っていたので、俺の中に何か不満が生まれてきた。結局前半部分では、前作までのファンに対するサービスみたいな物以外はたいした事ない、と言った感じであった。編集のお陰でアクションが台無しになっていたのも最大の原因の一つ。

だが、墓地の辺りから徐々に話が広がっていき、今回ターミネーターが送り込まれた理由、未来の事実等が明らかになるにつれ、次第にスクリーンに吸い込まれ始める。今回のターミネーターがジョンの命令を聞かない事、未来の事実、運命。これらが前二作から色々引き継いだ展開を見せる事により、ファンの期待を裏切らない展開を見せ、そして話に広がりを見せるのだ。

しかしまぁ、その後の警官隊とのショボイ銃撃戦はいただけなかったが・・・(何しろ二作目であれだけ派手にやっただけあって、印象が・・・)。が、クライマックスのT-Xとシュワとの便所での肉弾戦はかなり凄かった。あのシーンは最高だね。T-1000とT-800が闘っている時よりも迫力満点だったし。

で、ラスト。「実は核シェルターだった」と言う事実と、審判の日を止められなかったと言う結末。このオチは結構気に入った。結局、ジョンは自らの運命を受け入れなければならなくなる。そんなオチを見せられて続編に期待せずにいられるか!

それにしても女性ターミネーター。あの断末魔(?)はまんまカマキリだね。それからテンポ。上映時間が二時間未満、と言う事でテンポも良く、そして見せるべき箇所はきちんと見せる、と言う娯楽の王道の徹底した展開をしているあたりに好感が持てる。

結局、悪い箇所も数箇所あるし、編集も下手糞。それにこの映画は明らかに前二作に劣っているし、何度も見返したい、と思える程の映画ではなかった。が、しかし全作から引き継いだ伏線等を見事に組み込み、ファンサービスに徹しながらも、ジョンが自らの運命を受け入れるまでの物語として十分成立させた辺り、やはり誉めるべきなのだろう。

そして、何よりも前作のプレッシャーに負けず、徹底して娯楽を追及したテンポ良い展開を生み出した職人技には拍手を贈りたい。ただ・・・VFXやカーチェイス等に金をかけすぎて、警官隊VSターミネーターと言う、最強の虐殺(!?)シーンがなかったので、映画にカタルシスが無かった事が最大の問題点。

ちなみにキメ台詞。せめてあそこ(T-Xを吹っ飛ばす時)に何かカッコイイ事言って欲しかったな。「you are terminated(お前は抹殺される)」なんてなんかイマイチじゃないかな?

要するに、前半アクション一辺倒で確かに迫力はあるが、話が展開しないので物語が停滞したままアクションだけ前に進むので白ける。そしてやっと後半で話が展開し始める。

確かに脚本は上手いが、そういうアクションと展開のバランスを保てなければアクションはただのこけおどしになる。

(評価:★3)

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