コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] TAXi3(2003/仏)

この映画で『WASABI』を宣伝する監督のセンスに脱帽。 2003年5月13日試写会鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず、冒頭のスピード感溢れる(←皮肉)鬼ごっこにやられた。何をやりたいのかわからない、下手くそな編集とスピード感の無いカメラワークに、挙句の果てに「これをやりたいから」作ったの丸出し。追い討ちをかけるように、マスクの下は我らがスタローンじゃねぇかぁ!しかも、タクシーに乗りやがる!そこにはダニエル!この展開はまさか、スタローンがタクシーに乗ってゲロ吐くのか!?このアクションで俺は席を立つ事を考えたが、スタローンの顔を見た途端、スクリーンに釘付けにされた。恐るべしスタ公パワー・・・。

しかし、その後の展開はワンパターン。おまけに警察の車は前作の悪役の三菱の「ランサー」と来たもんだ。初っ端からのセルフパロディと、合成丸見えのマフラーからの炎の加速に唖然とした。そして思い出した、この映画はコメディだったんだ。しかし、スタローンがゲロを吐かなかった姿を見て、やはり彼はまだまだ現役(?)だなと確信。

しかし、一作目のオープニングは傑作だった。ピザ屋が『パルプ・フィクション』のオープニングの曲で疾走する。火花が散る。一作目のオープニングは本当に傑作だと思う。度肝を抜くカッコよさと、ピザ屋のアンバランスが俺のハートを刺激した。しかし、何を血迷ったかこのアホ監督は今回、『007』をパロディしたのだ。しかも、全く笑えないパロディを。

開始から「だるみ」を生み出すとは、この監督は相当の才人なのだろう。何しろ前作ではタクシーに空を飛ばせ、『WASABI』では半ばコメディの快作(未見)を生み出した、フランスの鬼才なのだから。

その後、エミリアンがおとり(潜入?)捜査をしている署長(サンタの格好やれば捜査できると言う意味不明な考えの元での捜査らしいが、誰が見ても無駄な捜査(?)である)を捕まえるシーンでは、露店に『WASABI』のポスター。あんた、あの映画にそんなに自信を持っているのか?

そして、よく分からない家族ドラマで軽く見せた後、いつカーチェイスするのかと待っていたが一向にしない。

変な家族ドラマを混ぜ込み、寒いギャグを入れ、謎の東洋趣味を爆発させる、アホコンビ(監督、製作者)。ベッソンは、マジに『フィフス・エレメント』で切れたようだ。誰がどう観ても、コメディのセンスどころか、過去に持っていた非凡な才能までも皆無に見える。しかし、彼が過去の栄光にすがり付いていない点は救いか。否、まだ過去の栄光にすがりついてくれる方が良い映画が出来たと思うが。

監督にも問題ある。ダサいCGとへっぽこ編集とスピード感溢れないカメラワーク。まだ『ワイルド・スピード』の方が面白い。ストーリーも毎度毎度同じで、ドラマが少し変化する程度。ギャグも「前作よりパワーアップ」と言っている割に、劇中爆笑は一度も無い。二作目の方がまだマシだった。そして、一作目のようにベンツを負かしてくれた方が、観客はカタルシスを感じるのではないのかと思うのは私だけだろうか?

ラスト、病院に駆け込むダニエルとエミリアン。アソコのシーンは二作目のセルフパロディなのか?まぁ、どちらにしろ続編は期待できない。大体、俺はこの作品すら期待はして居なかったのだが。

まぁ、この映画に文句言っても「ベッソンだから」の一言で片付いちゃうよね。

ただ問題なのはオープニングの鬼ごっこのシーン。スタローンが出てきたから、「雪山のマッチョ=『クリフ・ハンガー』再来!」を思ったが、予想を裏切られた挙句、何故彼が追われていたのかすら不明。カメオ出演させるならもっとマシなシーンにしろよ。これじゃ、天下のスタローンが台無しじゃないか。

そして、雪山のシーン。意味あるの?この映画ってマルセイユの街を改造プジョーが疾走(何しろ一作目は街一つを封鎖して撮影したらしいし)するからこそ魅力があるのであって、雪山でデカイタイヤをつけたダサいプジョーなんて俺は見たく無かった。もし四作目が作られるなら、市街戦をして欲しい。

とにかく、監督とベッソンは一種の馬鹿映画を作れる天才だと思う。こういう人がフランス映画業界で生き残っている限り、フランス映画の知名度は下がる一方では?

まぁ、こういうバカ映画は、根っから批判せずに気楽に楽しむ物なのだろうけど、俺は「批判する楽しさ」だと思っています。実際映画として酷いし、万人ウケするとは到底思えない。アクションの質もギャグの質も低く、本当に救いようが無い。唯一救いようがあるのは「救いようが無い」という点。つまり、この映画の存在自体がギャグという風に考えれば良い訳だ。

だけど、観客全員がそれに気付いてくれると思ってるのか、ベッソンよ。

(評価:★1)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)HILO[*] たろ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。