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[コメント] サンダーバード(2004/米)

「来ました!」という厚化粧の女性リポーターのはずんだ声と、テレビを見守る少年たちの歓声。他に何を望むというのだ?
てれぐのしす

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







子供のときウルトラマンを観て「あ!糸が見えた」だの「チャックが見えた」だの得意げに鬼の首を取ったように騒いでいた子供は、大きくなってその「揚げ足取り」を「ツッコミ」などと称して、あたかも批評の一環のような口ぶりで語るようになった。 そして彼らみたいな人間が、自分たちみたいな人間に対して作っているのが、あの小難しいだけでカタルシス不在、ヒーロー不在の一連の「平成ライダーシリーズ」なのだ。 この作品を彼らは鼻先でせせら笑うと思う。だがプロの映画人として何百億の制作費をもらったって、彼らにこれは作れない。本質的に彼らにとってヒーローとは、「等身大」のものであり、「憧れの対象=自分たちより上にいる」であるヒーローなど理解できないからだ。

さて、この映画。末っ子アランの孤軍奮闘を中心に話が展開する。アランの年齢がちょうど思春期の「大人まであと少し」というのがポイントで、前線で活躍する兄達に子供扱いされ、からかわれながら(もちろん愛情一杯なのだがわかるわけない)「僕は子供じゃない!僕もサンダーバードに入れて!」と悩む姿は、よくわかる。一人前に扱ってもらいたい自意識と、でも実はまだ一人前じゃないことを知っているからこその葛藤。 それがあるとき突然、一員どころかサンダーバードの命運を握る重大な事件と対峙することになってからが、アランの成長物語である。しかもメガネくんとヒロイン付きだぞ。子供映画最高の王道路線じゃないか。誰が「ツッコむ」ものか、それは僕の美意識において「おとなげない」というものだ。

シンガポールのレポーターが「この緊急事態を救えるのはサンダーバードの『奇跡のメカたち』だけです!」と言うセリフもベタベタでしびれるぞ。 そして窮地にあって、いや窮地だからこそ大胆不敵な女性二人のなんと魅力的なことか。海岸線を行こうとする二人に、ジャングルを通ることを平然と提案するティンティン。異常事態が起きていることを知りながら「さあ、何が待ち受けているのかしらぁ?」と笑顔でトレーシー島へ向かうペネロープ。その美しさと凛々しさ、どちらもまさしく本物のレディである。

最後にアラン。お前はまだまだだ。でももう少しだぞ。

さて、新宿の高島屋に車で行くか。「あの駐車場」で「たったかたーたららったったったかたったったー♪」と口ずさむために。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)プロキオン14[*]

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