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[コメント] フレイルティー 妄執(2001/米=独=伊)

善悪の領域を超越した神様と悪魔の話。無神論者の俺が観てこの緊迫感と恐怖の余韻を感じるのだから、有神論者が観たことを考えるとゾッとする。いや、これは本当に聖書を理解している人が観たらどんな事態になるか想像付かん…
ナッシュ13

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







回想が子供の視点なのが良い。昔を振り返っているのだから当たり前なのだが、やはり衝撃が大きい。幸せだった父子家庭の家族が突如として変化してしまうのだ。これって物凄く残酷な出来事だろう。

父親が悪魔をお払い箱にするべく次々にリストの人物を惨殺。それを眺める二人の兄弟。しかし、この兄弟の心情は正反対だった…。兄弟という糸で結ばれていても、結局は幼くして既に違う道を歩んでいたのだ。考えるだけでも恐ろしい。無論、フェントンのような考えを抱くのは仕方がない。父親は間違いを犯している、今すぐ止めさせねばならない…と。様々な疑念が渦巻いたと思うが、もし俺が同じような立場だったら…と考えると本当に辛い。血の繋がりがあるからこそ辛い。そう、人間としては認めることが出来ないのに、やはり父親なのだ。なんて残酷なのだろう…。子役達の好演に押されつつ、俺は心底唸ってしまった。

ここで言いたいことは、決して無情な脚本ではないということ。情の塊のような、そんな脚本だと心から思う。この描写が常に訴えかけてくれる。問いかけてくれる。「神様を見た」「あいつは悪魔だ」ということに限らず、人間そのものに次元がおかれている。

後半に進むと、物語が急加速する。ラストの大どんでん返しは実に無駄がなく、カルト的で不気味な仕上がりになっている。やはり、あの回想シーンが決め手だろう。素晴らしいそれによって、どんどん引き込まれていった。そして、余韻に浸ること必至。殺人を犯しているから悪魔として滅ぼすというのは物凄く極論だけれど、「それは違う」と俺は口が裂けても言えない。

ビル・パクストンの初監督作品とは思えぬ落ち着いた丁寧な描写に好感がもてる。変にクセがなく、どんな人でも引き込まれてしまう要素がある。見るからに低予算だし、血糊の量も多くないのだが…やはり魅せる技術が違うのだろう。

子役はこれ以上にないくらいの演技。申し分なし。マシュー・マコノヒーも、個人的にあまり彼の作品は観ないのだが、陰湿な演技が物凄い。唯一、パワーズ・ブース演じる捜査官だが、ちょっとネタバレな演技ではなかったか?それとも、やはり人間、悪行が表情に出てしまうとでもいうのか?笑

神様や悪魔に限らず、俺ってどんな人間なんだろうねぇ・・?と、少なからず思ってしまったのでした。以上、レビュー終わり。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] uyo ざいあす[*]

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