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[コメント] ぺトラ・フォン・カントの苦い涙(1972/独)

完全に演劇をそのまま映画化した作品だ。出演者は女性だけ。舞台の調度もいたってシンプル。宗教画のような大壁画が画面いっぱいを覆っているが、それもそれほどハナシに影響してこない。(裸体が少々意味あるのかもしれないが、、)
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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女の一生のハナシである。ファッションデザイナーで一応通常の結婚も経験しているが、ある時から一人の女を求め彷徨っている。けれど、所詮、性的に住む世界が違うところでの恋愛なのである。若い女からは呈よく無視されることになる。 血縁、家族からも自然と疎遠になり孤独のままに死んでゆく女。

ごく通常のハナシである。舞台が同一で単調すぎるので、映像的にも変化に乏しい。その分、女の心境の移ろいが重いテーマとなっているが、それほど共感も出来ないのである。若い女に恋し、その女がノーマルであるからこそ失恋するのは当たり前のことであるので、女の苦悩が僕には伝わらない。

でもこれこそがファスビンダーの自己投影なのかもしれない。でも人生なんて、相手が女であろうと男であろうとに好きな人とは結ばれないものになっているのだ。赤い糸にたまたま結ばれても本当に強い愛を保持できるのは一時であるからして、一生の大半を愛の苦悩で過ごすというのは当人にとってはかなり苦しいものであろう。

それもまた人生なのかなあ。閉塞的な舞台劇を見てファスビンダーの意外な清楚な気持ちを垣間見た気がしました。彼の演劇へのこだわりも面白かった。

(評価:★3)

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