[コメント] 孤独のススメ(2013/オランダ)
映画を見終った人むけのレビューです。
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時間通りに起き、食事をし、そして教会に行く。車も持たず、バッハの音楽を聴き、今いない妻と息子の写真を常に見ている初老の男。そんな男に変化をもたらしたのは、どこかおかしい無垢の迷い人。彼とともに生活を共にしていく過程で自分を取り戻してゆくのだが、、。
妻は事故で亡くしたけれど息子は生きてたんだ。息子も同じく亡くしていたと思っていた僕は彼の孤独もそれほど深刻でもないとその時思う。今や、全世界で孤独の生活を営んでいる人はかなりの率でいるのだろう。
ましてや誰かと同居していたところで孤独感が癒されることはないだろう。人間にとって孤独とは当たり前のことである。生まれるときも死ぬときも決して誰かと共にではない。ひとりなのだ。ひとりからは解放されない。
毎週教会に通っているからといって神を信じているわけではないのだろう。主人公は「神が僕らに何をしてくれた!」と近所の友人に詰問する。その友人も実際は主人公と全く同じく孤独の人だったのだ。しかも、迷い人を主人公から奪われていた。
この迷い人。邪念もなく、子供や動物とすぐ心が通じ合う。事故で脳が損傷したのか常に徘徊している。まるで現代に降下してきたキリストのようであるなあと僕は思う。
ふんだんに流れるクラシック音楽。息子の名前がヨハン。それだからか彼はヨハン・セバスチャン・バッハの曲だけを聞く。しかし、ラスト近く長らく会っていなかった息子が歌っていたのはシャーリー・バッシーの「THIS IS MY LIFE」。
ずっと流れていたクラシックから取って代わって、血のたぎるような名曲を息子が熱唱する。感動が極まる。
形も、飾りも、衣服も、思想も、全部脱ぎ捨て解放されて、シンプルに自然に生きること。そして、孤独ってゼンゼ〜ン悪くない、と思うよ。「孤独のススメ」、いい映画だね。
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