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[コメント] 本陣殺人事件(1975/日)

横溝作品に垂れ込める暗雲を吹き払うかのような、クリアーで見通しの良い画面。そのせいか、この原作本来のトリッキーな味わいを再認識できた気が。低予算という災いが面白い方向に転じている、とは思った。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ただ、個人的にはこうもキレイに吹き払われると寂しい。あくまで好みの問題ですが。

後の『蔵の中』がダメでこの作品は観るべきものがあるのは、予算云々よりも案外この監督の特質と原作との相性なんでは、と思った。映像が持つ「美」が良くも悪くも表層的なので、暗い情念とか幽玄云々よりも、何と言うか日本家屋を始めとした余計な装飾を排した形の美しさ、その凛とした佇まいの美しさを際立たせている気が。そのような背景でこそ主人公の潔癖症もよく馴染んでいるし、逆に場の調子の狂わせる鈴というキャラも際立つし、何より読んだだけでは良く理解できない機械的なトリックも映えるのではないだろうか。

構図も編集も一言で言えばトリッキー。朱の墨のような血糊も非常に鮮やかで、陽光も緑も眩暈を誘うほどに眩しい。しかし、一番印象に残ったのは、カメラがしきりに背後の人物に焦点を合わせていたこと。意図がよく分からなかったけど。

(2007/3/18)

(評価:★3)

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