[コメント] PERFECT BLUE(1997/日)
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特に印象に残ったのが、レイプシーンを演じた夜に、水槽の魚が死んでいる姿(幻影)を見て泣き叫ぶシーン。帰りの車の中では何事もなく、家のドアを開けた時も何事もなく、日常の景色の片隅に、明らかに今までにはなかった「景色の歪み」を見た瞬間、堰を切ったように泣き叫ぶ。こんなはずじゃなかったのに、と。非常に心的にリアルな表現だと思った。
ぬけるような青い空、パーフェクトブルーで話は終えるワケだが、そこまでの爽快感はない。それは多分、マネージャーが霧越未麻に自分を重ね合わせていたように、未麻もまたマネージャーに過去の自分を重ね合わせることで、脱アイドルへの、そして「私」を取り戻すための儀式を貫徹したからではないだろうか。
ラスト、病院での「もう二度と会えないことはわかってるんです」という言葉には、二重の含みがある。マネージャーの元気な姿に会えないという表向きの意味と、過去の自分への決別と。冷静に考えてみれば、過去の自分を病院送りにするなんて、スゴイ話だ(笑)。個人的には、その過去を引き受けた上で今の自分がある、なんて思ってしまうのだが・・・。そして大量に流された血。儀式にはしばしば「生贄」が存在するもの、なのである。
ともあれ不快感は禁じえないとはいえ、全体を通せば面白かった。ただ、あえていくつかの要素の説明を棚上げにいることで、ただでさえ執拗な後半の展開を、さらにウンザリするくらいの混迷に追いやっている。このことには、作り手側の悪意すら感じてしまう。
(2006/6/25)
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