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[コメント] ブロンコ・ビリー(1980/米)

願わくば、もう一度同じ素材を使って作品を作って欲しいところです。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 出世作『荒野の用心棒』以来一貫して西部劇にこだわったイーストウッドは、様々な形で西部劇を解体し、その本質を問う作品を作り上げてきた。

 アメリカは新興国家であるため、土地に神話を持たないが、その代わりとなるものとして西部劇が存在する。イーストウッドが演じ続けていた基本的に主人公の名前を必要としない主人公達は、その神話を体現するものだし(『アウトロー』で言及)、粗野で自分なりの信条を持っているが、人間関係があまり上手く行かないという、アメリカ人の理想的人間(こういう人物をグッド・バッド・マンと呼ぶそうな)を西部劇ヒーローの典型的人物に当てはめ、それを現代劇で演じてみたりもしている。

 そして西部劇のもう一つの側面。つまりそもそも西部劇は、娯楽の少ない住民達に対するショーから始まったというルーツを描いて見せたのが本作と言える。こういった西部劇ショーが繰り返し演じられることによって人々の記憶に残っていき、そこから現れたヒーロー性がアメリカ人の最も好む人物として、又神話のような役割を果たしていったのだから。

 その原点を理想ではなく、現実的な目で描いているのが本作の特徴。ここに集まってくるのは一芸には秀でているが、現実的な能力ではなく、結局食い詰め者の掃きだめのような場所。しかし、そう言う落伍者が集まるからこそ生じる家族的雰囲気がある。助け合いのコミュニティがやがて家族になっていくという過程は結構好きだし、男女間の愛情よりも守り守られる存在としての愛情を強調するのもイーストウッド作品の特徴でもある。

 そう言う意味では結構楽しいのだが、やっぱり監督としてもう少し成熟した状態で本作は作って欲しかった感じ。細かい点で色々引っかかってしまう。下手にエンターテインメント性を持たせようとした結果、話が変な具合に飛んでしまい、しみじみという感じではなく、何よりロックが浮いてしまって困る。イーストウッドはロックを好んで使っているが、妙な派手っぽさが雰囲気と馴染まない。 

(評価:★3)

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