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[コメント] メルビンとハワード(1980/米)

男同士の友情とは、ほろ苦いものです。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 突然莫大な金が入ってきたら?という設定のコメディ。このタイプの作品もアメリカでは好まれる題材らしく、古くはキャプラの『オペラハット』やキートンの『セブンチャンス』なんかもあるし、遺産相続によるサスペンスや法廷劇は、それこそ山ほど存在する。

 突然降って湧いた遺産相続と、それに伴うごたごたや裁判など、外面的に見る限りは本作も又それに近い話となってる。

 ただ、本作の面白さというのはそこにあるのではないのだろう。

 主人公は本当にどこにでもいるような“普通”の男。ただ、他の人に合わせる生き方が出来ないために、損ばかりしている人間である。そんな人間が、何もない偉人と出会うことで物語が始まるのだが、この二人は全く接点が無いのに互いに自分自身を相手の中に見ることが出来た。という部分が面白いのかと思う。

 奇人として知られるハワードも、金をもし持っていなかったら、メルヴィンと同じだったかもしれない。だけど、こういう生き方もなんか羨ましい。と思う側面があっただろうし、メルヴィンにとってもハワードは“ちょっと変なおっさん”ではあっても、自分自身に似た部分が多い事に気づく。

 二人の接触部分はとても短いのだが、その時に感じた同胞じみた考え。友情と言っても良いだろう。これが物語全体を貫いているからこそ、面白く感じるのだ。

 いくら一生懸命やっても、“ちょっとだけ浪費癖がある”ことで何もかも台無しにしてしまうメルヴィンは、多くの人が共感を持つ存在だし、それでこんな友情があったら面白いだろうな。とちょっぴり羨ましく、一方では、私に似てるけど、私はこんなに酷くはない。と自己満足も出来る。そう言う意味では身に迫ったほろ苦さを感じさせるコメディ作品だ。

 メルヴィン役のル・マットが良い味を出してるが、短くても強烈な印象を残すハワード役のロバースも、メルヴィンを支えてるようで、支えてないという微妙な役所の妻スティーンバージェンの存在感も上手く作られてる。

 「ハワードは俺の歌を歌ってくれた。それでいいんだ」

(評価:★3)

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