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[コメント] カサブランカ(1942/米)

映画における奇跡の体現。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 基本的に私はメロドラマが嫌い。特にそれが不倫と関わっていたりすると、どうにも引いてしまう。正直な話、本作も基本的なストーリー自体は食指をそそる程でなかった。

 その方面にそそられることがないとは言っても、本作の場合、それ以外が凄く良かった。台詞の一つ一つが名言で(口説き文句としてはもはや冗談の域にはいるほどの名言「君の瞳に乾杯」であれ、「そんな昔のことは忘れた」「そんな先のことは分からない」とかね)、更にカメラ・ワークの巧さ。息詰まる緊張感。監督の力量にはそのまんま感動を覚えてしまう。特にラストシーンの男二人が肩を並べて去っていくシーンはそれだけで感動ものだった。

 後で知ったことだが、本作の撮影には並々ならぬ苦労を強いられたそうだ。

 そもそも本作はWBが製作したのだが、WBの中ではぴったりしたキャスティングが出来ず、他のスタジオから俳優を借りまくることになる(例えばバーグマンはセルズニックから、ウィルソンをパラマウントから、ファイトをMGMから)。又、脚本も苦労の連続をカーティーズ監督に強いることとなる。撮影のその日その日で脚本を読み直し、決定した部分だけをメモにして毎回役者に配っていたと言う。更にどうしてもラストシーンをどうするか、監督自身に分からず、最終的に絞り込んだ二通りのラストを考え(一つはリックとイルザをくっつける内容になっていたはず)、そのどちらも撮ってから、良い方を残そうと考えていたらしい(ただ、最初の撮影があまりにも良すぎたためもう一種類のラストは撮られずじまいとなる)。

 それだけ苦労したため、本作が拍手喝采をもって迎えられるとは思わなかったのはなによりこの作品に携わった人たちで、主演のバーグマンは、そんなことは絶対にないと思っていただけにアカデミー受賞を聞いて大変驚いたそうな。

 多分その緊張感が上手くはまったために本作は名作となり得たのだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)マカロン[*] Keita[*] makoto7774

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