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[コメント] 招かれざる客(1967/米)

コメディの威力とは、心に「ちくっ」とくるところも描けるところですね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ホームドラマの視点で人種問題を扱うという初めてのテーマに挑んだ作品で、非常に挑戦的ではあるが、決してそれは重々しいものとはならず、あくまで軽快に、コメディ調に物語が展開するのが特徴。

 当時、本作がアメリカ国内に与えた影響はかなり大きなものであり、一方では人種問題自体を扱ったことに対して、一方では人種問題をコメディにして軽々しく扱うことに対して批判が出たそうだが、今からすれば、それは慧眼であったと思わされる。重い問題だからこそ映画で笑い飛ばしてしまった方が良いのだ。その辺クレイマーはリベラルであってもバランスが取れた監督であることを感じさせてくれるし、重い題材だからこそ笑いにくるむハリウッドの強さはしっかりここでも出ている。

 しかし、ここで語られている事は決して軽くはない。ジョーイの父親はそれなりに有名なリベラリストであり、本人も実際その意識は強かったのだろう。ところが実際娘が連れてきた青年を見て、とっさに動転してしまって、訳の分からない理屈を並べて結婚を否定しようとする。これは当時の“リベラル”と呼ばれる理解ある人々の実態である。という事を伝えているようだ。少なくともこれで「ちくっ」と来なければならないはずなのだ。実際差別の心は誰にでもあり、それを否定できない。

 しかし、それは乗り越えられる。それを信じることが出来る。というポジティブなところできちんと落としてくれている。どれほど甘くてもちゃんと落としどころがしっかりしているからこそ、本作は素晴らしいのだ。

 トレイシーとヘップバーンが抑えた好演をなしているのも重要。この二人あってこその成功であることは確か。普遍的に重要な作品なので、幅広く観て欲しい作品の一本。

(評価:★4)

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