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[コメント] 俺たちは天使じゃない(1955/米)

彼らは天使じゃなかったかも知れないけど、天使役ではあったね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 南国ののどかな港町を舞台に、囚人達がおりなすコメディ。囚人の代表ボギーが決して渋さを失わないまま上手くコミカルさを演出していたし、他の二人もそれぞれにきちんと見せ場があって、とても心地よい気分にさせてくれた。

 凶悪犯でありながらも悪に徹することが出来ず、結局人助けをしてしまう三人の囚人達。前半はその課程に費やされる。この辺りの展開がやや冗長っぽい感じではあるが、逆にそれが個々のキャラクターの性格把握を容易にしてくれている。

 問題は彼らの人助けの方法って言うのがえらく短絡的というか直結的というか、悪者を排除して終わる。と言うのはちょっと不満。ねちっこく虐めるとか、最後に店から蹴り飛ばして「もう来るんじゃねえ」とか啖呵を切って終わるとかの方がすかっとした気分にさせてくれただろうに。「殺ったのは俺たちじゃなくて蛇の方だ」と言うのも言い訳がましい感じ。まあ、確かにこの描写はスマートには違いないけど。

 後は船に乗るだけ。そうすれば晴れて自由の身、と言うところで刑務所の中の快適さを思い出して語り合い、三人揃って刑務所の方に向かうラストシーンはなかなか良い演出。更に一人一人の頭の上に天使の輪が一つ一つ灯っていき、最後に蛇のバスケットの上にも輪が灯る。結局天使は3人じゃなくて4人だった訳か。

 ところでここで何故“天使”と付くのか、ちょっとくだらないことを考えた。この作品は良くあるパターンとは異なり、彼らは誰一人自分の恋物語を成就させることなく、結局イザベルの恋を忘れさせ、新しい恋に導いている。そう言う意味ではキューピット役、つまり天使役ってことになるんだろう。

 結局この作品を総称すると、とてもオシャレな作品。それで良いんじゃない?

(評価:★4)

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