この時代のシリーズは結構色々と試行錯誤して新しい試みがなされていたのだが、本作は原点回帰っぽい作風に戻ってる。マドンナも大原麗子だし、まっとうな切ない恋愛物語が展開されてるる。

　ただ、それだけじゃなく、久々に名優志村喬が再登場して、「今昔物語」の話を語って聞かせたり、泉ピン子がダブルマドンナ(？)として登場したりと、色々盛りだくさん。逆に言えば、それだけまとまりがない話だとも言えるけど…

　志村喬扮する諏訪一郎が語った「今昔物語」はそれで充分聞き応えがあったけど、これが渥美清によって脚色されると、これが又、実に味わいが増す。子供の頃これを聞いて「今昔物語」に興味を持ったことを思い出す。結構深い内容を持った作品。

　最後は静かに身を引く寅さんの姿も良し。