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[コメント] 雪国(1957/日)

寒さの演出が出来てる。これだけでも評価の対象でしょう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 お恥ずかしい話だが、これだけ有名でありながら原作の方は未読。せいぜいそのフレーズを知ってるくらい。そう言う意味では大変新鮮な思いで本作を観ることができた。  しかし、しばらく観ていると、「あれあれ。これ結構苦手なタイプかも」という思いがふつふつと湧いてくる。映画の中でなにが苦手と言っても、ストレートに男と女のどろどろした関係を描かれるのほど苦手なものはない(単に私の精神がおこちゃまというだけなのかもしれないが)。しかるに本作はドストレート直球の不倫もの。

 そう言うわけで、どろどろとした物語そのものはかなり苦手。しかし、演出やキャラの良さは確かにすばらしいものがある。

 なんと言っても、表題が「雪国」というだけあって、寒さの描写が実に優れていた。体の外の寒さというものが人間の中にある感情に作用し、その寒さに負けない熱い心が垣間見えたり、逆に寒い外側に呼応するように冷たい心が見えたり。心の外と内の温度差というものが、静かに静かに展開していく。

 外側の温度を物語に活かすことができる作品というのは、それだけで大きく評価できるものだが、日本の作品では本作はその最も端的な雰囲気を持つ作品なのかもしれない。少なくとも、観ていて温度を感じさせる描写についてはかなり上手い。その点は評価している。

(評価:★3)

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