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[コメント] GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊2.0(2008/日)

最終的に思うのは、「古さとは、それはそれで悪くない」というところかな?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 幸いなことに押井監督はコンスタントに作品を作られるようになり、いよいよ新作『スカイ・クロラ』が公開されることになったわけだが、その公開直前に、突然の発表があった。

 『攻殻機動隊』が、セリフリメイクされるというのだ。勿論『スカイ・クロラ』の宣伝という側面もあるが、1995年に、当時の最高技術を使って作られた作品であっても、既に時代遅れとなり、今の技術を使って、更に新しい作品として作り上げようという意図があったのだろう。少なくとも、こういったリメイクが可能なのは本作しかない。それに、監督自身も試してみたかったんだろうから、それはそれで結構なこと。

 改めて観てみると、やっぱり劇場で観て良かった。もう私の中ではイメージは固定化されてしまってるけど、大画面で観ると、色々な思いがわき上がってくるし、その分新しくなった部分もしっかり分かる。なんだかんだ言っても、やっぱり好きな作品を劇場で観るってのは良いもんだ。

 ところで本作のオリジナル版との違いは、基本的にはCGの挿入によって画質アップを図ったことと、ストーリーをほんの一部だけ変えたことの二つ。これによってほんの少しだけ上映時間が延びることにもなった(80分→85分)。

 CGの使い方に関しては既に『イノセンス』でやっていたこともあり、かなり手慣れたものとなっていて、その部分は確かに見所になってる。だが大半はオリジナルのプリントを用いたため、その部分とのつなぎにはかなり苦労した部分も見える。事実浮いてしまったカットが散見され、かえって昔の方が良かったんじゃ?と思われた部分もいくつか。悪く言えば、増やした部分は、「とってつけた」ような印象を与えてしまった(事実OP部分はほぼ同じ事がTV版の「攻殻機動隊S.A.C.」でやられてるので、それを無理矢理もう一度やったって感じ)。逆に言えば、直す必要もないほど前の作りが良かったと言う事でもある。あとエフェクトも微妙に変えられていて、オリジナル版が深い青をイメージしていたのに対し、今度は全体的に赤というか、オレンジっぽい色合いで統一。これは『イノセンス』で使われていたものと同じなので、その統一を図ったのだろうか?オリジナル版の無機質っぽい感じが、すこし柔らかみを持った感じがする。

 そしてもう一つがストーリーの改変だが、これは本当に微妙なところ。変わったのはたった一つで、人形使いの声が家弓家正から榊原良子に変えられたことで、「彼」が「彼女」になったと言う事だけ。そのためだけに台詞は全部新規録音されているわけだが、これに関しては良いところと悪いところあり。『イノセンス』を受け、バトー役の大塚明夫の声が、妙に疲れた雰囲気に変えられてる。これも『イノセンス』に統一しようと考えたのかとも思うのだが、元のイメージとは随分違ってしまった。もうちょっと溌剌したバトーで良かったんじゃないかね?(「S.A.C.」の時はもっと元気良かったから、これも押井監督の指示かな?)

 最大の違いである人形使いが男から女になったことだが、これは悪いと断定はしないけど、私はちょっと否定的。そもそもが本作のメインテーマは単なる“ネットと人間の同化”ではなく、“異種間同士の結婚”であったはず。それが女同士になってしまうと、テーマ性が後退してしまうような気がするし、それに榊原良子と田中敦子は声の質が似てるので、同じ調子で会話されると、更に違和感あり。元は女性のボディで男の声というのがやっぱり良かったのかもね?

(評価:★4)

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