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[コメント] お茶と同情(1956/米)

この年は『バージニア・ウルフなんて怖くない』も製作されているので、まさしくこの年がハリウッドが新しくなる転換点と言えるかもしれません。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 映画技術が日夜進歩しているアメリカにおいては面白いことに演劇は決してすたれることなく、きっちり棲み分けが出来ている。これは演劇の本場が東海岸で、映画の本場が西海岸という地理的な要因も大きいと思うが、良い意味でも悪い意味でもどちらも時代に合わせて変化すると共に、双方が影響を与えあって成長してきた。例えば映画で用いられる舞台演出はかなり簡易的なものとして舞台にも用いるため、演劇の方もかなり見栄えがするようになったりもしている。一方、ニューヨーク派と呼ばれるインディペンデント系の監督達はブロードウェイの本場ニューヨークで活動するため、演劇の経験者が多いし、映画ではNGだが演劇ならOKという演出要素を映画演出好んで取り入れるのが特徴。

 映画が演劇に影響を与えることも、演劇が映画に影響を与えることも多いのがアメリカの特徴。その意味で本作は見事に後者の代表とも言える作品であろう。

 物語そのものは実はベタベタの文芸作品で、昼メロそのまんまの物語展開。けっこうこれってげんなり来るような話なのだが、これは1950年代のアメリカでは演劇では許されているが、映画では避けられてきた物語。当時のハリウッドで好まれたのはむしろマッチョな男で、女性の方をぐいぐい引っ張っていくタイプの物語だった(ここで言えばトムの親父やビルのようなタイプ)。そんなのとは完全に逆行する物語がここには展開。むしろマッチョでなければならない。という無理よりも、もっと素直に生きるべき。というのが主題で、しかも不倫まで扱っている。この時代に映画にするにしては先進的すぎる内容だ。

 まあ尤も、内容は決して好みとは言えないため、評価はそんなに高くはならないんだけど。

(評価:★3)

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