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[コメント] ミラグロ 奇跡の地(1988/米)

どんな田舎に行けば、このくらいの武勇伝の一つは転がってるものです。でも、だからこそ丁寧な描写が映えます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 レッドフォードはこよなくアメリカの片田舎を愛する人で、大自然に囲まれた中で、ちょっとした変人を主人公にした作品を好むようで、監督作や主演作の多くは自然の多い田舎を舞台にしている。この辺盟友である都会派俳優ニューマンとは大きく異なった方向性を歩んでいる。この二人、仲が良く共演作も上手いはまり具合なのに、個性が随分違うのも面白い。

 完全に監督に徹して作られた本作も、そう言ったレッドフォードの好みが強く出た作品で、田舎町を舞台として、その町にとっては大きな、しかし映画的に言えばこぢんまりした作品となっている。物語は、浮いている一人の人間の暴力と勘違いで町の人間が右往左往すると言う、ごくごく単純なもので、敢えて言うなら、どの田舎にも一つくらいある武勇伝のような話。

 でも、こう言う物語に手を抜かず、丁寧に仕上げてくれた監督には頭が下がる。

 内陸部にある赤茶けた砂の雰囲気、そして一生この町にいなければならない人々の欲やあきらめの強い性格、そしてそこで一人黙々と自分のなすべきことをしている主人公。人間のなしていることが気まぐれな運命によってあっという間に良くもなり、悪くもなる。なんかすごく大きな目から見たささやかな人間同士の絡み合いを見させてくれるような気分になる。ご都合主義的なラストも、そういった大きな視点から見ているからこそ許せる範囲内。

 風景描写は申し分なく、田舎独特の厚い人情といい加減さも程よいさじ加減なので、癒されたい気分になったら、最適な作品だろう。

(評価:★3)

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