コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 鉄人28号 白昼の残月(2006/日)

相変わらずの暴走っぷりですが、原作無視こそが今川監督の持ち味なんでしょう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 かつてOVAで横山光輝原作の「ジャイアントロボ」を独自解釈により横山キャラ総出演の作品に変え、大いに話題を湧かせた今川監督が、再び横山光輝原作で、日本のロボットアニメの先駆けとなった「鉄人28号」を、再び独自解釈を自由に使って作り上げた新しい鉄人の映画化作品。今川監督は先行して本作のテレビアニメも作っているので、そのアニメ化という側面もあり。

 やはり思い入れがあるのだろう。思いっきり演出には力が入っていて、見所は多数見受けられる。流石にアニメもデジタルとなり、かつて手書き最高峰と言われた「ジャイアントロボ」で観られた重厚感は失われているが、暴走っぷりは失われておらず。

 今川監督作品は昔から「原作レイプ」という悪評を受けてるが、それは当然である。本当にレイプしてるつもりで作ってるんだから。他者の作り出した、いわば子供を奪い取って自分の子供にして、好きなように動かしてやる。この悪意こそ、この人の作家性の高さにつながるものだから。

 その意味で初劇場作品となった本作は、いろんな意味で今川監督の思いと暴走が入り込んでる。それは先に挙げたような記号的なキャラであったり、敢えて実写特撮風味をアニメーションに取り入れた動きをさせてみたり、デジタルではなかなか得られないロボットの重量感を出してみたり、わざわざ音楽を伊福部昭を起用したりと。まあいろんな所に外連味が見られる訳だ…というか、この作品から外連味を外したら何にも残らん。

 ただ、それが上手く機能しているかどうかと言うのは別問題。監督にとっても初劇場作品と言うことで、外してはならないという恐れがあったか、他の横槍に押されたか、画の動きやキャラの魅力がそのまま映画の魅力とはならないまま終わってしまった。  この作品に限って言えば、キャラの暴走は上滑りし、一本調子な物語と、やたら多い説明的な台詞が物語の中にすんなり入り込むことを阻害する。変に大戦がどうこう思想的なものを出さず、完全なアクションアニメとして割り切ってしまった方が良かった気がする。その辺の歯車が上手く噛み合ってくれれば大傑作になり得た作品だったのだが。

 だからこそ、今川監督のリベンジを期待したい。もっと過酷にアニメーターを苦しめた上に、暴走しまくった、妄想全開の、まさに今川ワールド全開の物語を。

 蛇足になるが、鉄人28号というのは28番目に作られたロボットという意味らしい。そうなると、劇中に出てきた“あれ”はやっぱり17番目に作られたんだろうな。特撮好きの今川監督だったらそれくらい平気でやってくれてるはずだ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。