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[コメント] スーパーマン リターンズ(2006/豪=米)

“スーパー”を“アンパン”に変えても成り立つストーリーです…が、このストレートさは成功だったと思います。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 クリストファー=リーブ主演による一連のシリーズ以降、劇場ではなりを潜めていたスーパーマンが帰ってきた!流石にリーブのイメージが強すぎてスーパーマンのキャスティングには苦労しただろうが、ブランドン=ラウスという、まさにスーパーマンそのものの俳優を手に入れたのは大きい。動くまでは結構不安だったのだが、あの筋肉の付き具合と言い、古めかしいアメリカンスタイルの顔つきと言い、割れた顎と言い(笑)、まさにリーブ以来のコミックスーパーマンの姿がそこにあった。これだけでも嬉しい。  このスーパーマンの大きな特徴と言えば、やはり“ストレートさ”というのに尽きるのでは無かろうか?近年かなりの数のアメコミヒーローが作られているが、その多くは心に闇を持っていたり、コンプレックスの固まりだったりして、ストレートなヒーロー像とはちょっと違った位置づけを与えられていた。例えばマーベルの『スパイダーマン』(2002)はまさに思春期の青年そのものの悩みだし、同じDCコミックの『バットマン・ビギンズ』(2005)では心の奥底にある闇を直視してきた。

 それに対し、シンガー監督が投入したのは、本当にまっすぐな作品だった。そりゃ確かにここでのスーパーマンも悩むし、嫉妬を覚えることもある。時としてただの人間にいたぶられる描写だってある。だが、それらは全て“ヒーローの宿命”として描かれている感じ。それ以上のものが感じられないのだ。言ってしまえば、王道。且つ、無難。  で、それが悪いか?と言えば、「とんでもない」である。“スーパーな人”を描くのだから、そのスーパーぶりを最大限に描くことこそが本作に与えられた命題だったし、このストレートさは、まさにそのまま観客が観たかったスーパーマンの姿だったはずだ。

 ヒーローが悩むのは良い。苦悩するのも良い。しかしスーパーマンについては、度を超してはいけないのだ。その辺シンガー監督はよく分かってらっしゃる。

 しかもこの演出は素晴らしい。『X−メン』(2000)の時も感じたが、シンガー監督、長い作品をダレ場なしに描くことにかけては名人級だ。2時間半を超える作品で、全然飽きさせてくれなかった。こんな当たり前の物語を作っておきながら、最後までほどよい緊張感を持ったまま観られるのだ。これだけでも評価すべきだろう。相変わらずアメリカばかりを舞台にしているのも、らしくって良い(笑)。それに次回作につながるいくつかの伏線もちゃんと残しておいた。

 復帰作一発目としては、これは成功だろう。独自路線を行くのは続編以降でも良い。

 配役に関しては、主役二人は言うまでもない。新人ながら、この人を待っていた!と言うべきラウスの存在感は素晴らしいし、敵役ルーサー役も、ハックマンの跡を継ぐならこの人しかいないだろう。というケヴィン=スペイシー。これだけで充分(実際の話、前に『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』(2002)観た時、ルーサー役はこの人しかない!と確信してたもので)。ただ、他のキャラがあんまり印象に残らないのが残念と言えば残念か。むしろ周囲の人間が存在感無かったから、すっきりしていたのかもしれないけど。

 恒例のツッコミをちょっとだけ。

 『スーパーマンIII 電子の要塞』(1983)以降、電話ボックスが無くなってしまったので、変身には苦労するケントだったが、今回は開き直って人混みでいきなり変身。どうやって人から隠れて変身するか。がスーパーマンの味だったのに、それを殺したのは無いだろう。それにいくら何でも、携帯電話がこれだけ普及している現代が舞台なら、すぐに正体ばれる。

 最大の見所であるジャンボジェットキャッチのシーンだが、ジェット機の主翼二枚は見事に落下してるんだよね。しかもアメリカ国内で。はてさて、これの被害状況はどの程度のものだろうね?親しい人を救うためなら、他の大部分の人間がどうなろうと知った事じゃないというスーパーマンらしいエピソードでもあるけど(笑)

(評価:★3)

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