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[コメント] 仮面ライダー THE FIRST(2005/日)

かつてオリジナル版の助監督を経て監督を勤めた長石多可男監督がこうして現役で監督をしている。それが嬉しい。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 日本の子供達に変身ブームを巻き起こし、現在も脈々とそのシリーズを重ねている「仮面ライダー」シリーズ。

 特にいわゆる平成シリーズはダイレクトに時代を反映した作品が作られ、一作ごとに全く違ったライダー像を見せ、何作かは見事に時代と合致してヒットを飛ばしてもいる。旧来の、いわゆる昭和ライダーファンには眉を顰められるきらいはあるものの、この幅のお陰で現在に至るもシリーズが続いているのだろう。

 本作はその「平成ライダー」の文脈で語ることができる作品といえる。キャラこそオリジナルの本郷猛と一文字隼人となっているが、二人の描写は全く異なったものとなっている。そのため、二人の描写はどこか古くさく、一方どこか新しいものとして観ることができよう。いわば一作目のオリジナル「仮面ライダー」を再構築して、今の時代に観られるものとして作り上げた作品と言うこともできよう。

 ただ、本作が面白かったか?と言われると、少々微妙かも?少なくとも90年代に作られた何作かのライダー作品と較べると格段に出来と言い、物語と言い、上がっているのはわかるのだが、入り込めない壁のようなものを感じさせられてしまう。

 その理由としては、先ほど書いたように「どこか古くさく、一方どこか新しい」ところにあった。「仮面ライダー」を脱構築するという姿勢は良いが、やっぱりオリジナルは偉大で、それに脚本の方が遠慮してしまった感じ。いかにも「私は原作を重視します」と言った雰囲気が抜けず、どこか70年代臭さがある。「どこか古くさく、どこか新しい」と言うことは、結局一言「中途半端」で言い表せてしまえる。それこそ一作目の再構築を目指した劇場版『ULTRAMAN』(2004)と同じ過ちを犯してしまった。それと、イケメン俳優を入れて妙にオシャレにしようとしたのは良いものの、泥臭いストーリーと噛み合わせがあんまり良くない。もう少し役作りに時間をかけていれば上手くはまっていたかも知れないけど、時間と演出不足が目立つ。

 それでも『ULTRAMAN』ほどに傷が深まらないのは、同時並行して全く新しいテレビシリーズが続いていたことにあった。視聴者の方が新しくなっているから、そういう「中途半端」さの部分を感じずに済む視聴者にはしっかり受け止めてくれるし、イケメン俳優を出すことによって見栄えを増すこともできている。私のような旧来の特撮ファンではなく、新しいファン層を作り上げているからこそ、本作は大きなダメージを与えることもなく、新しい「仮面ライダー」サーガを作ることができたのだ。

 少なくとも、オリジナル版の「仮面ライダー」に本気で取り組もうとしたその姿勢は充分評価できるだろう。

(評価:★3)

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