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[コメント] 大酔侠(1966/香港)

前半後半で極端に物語が変わったのも、あまりにも新しすぎたと言う事に危惧を抱いた製作側からの横槍が入ったのかもしれませんね?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作では京劇の要素を排除したが、その代わりに様々な新機軸を取り入れた。

 一つには初めて武侠映画で女性を主人公にしたこと。京劇の場合女役も男が演じるため、本物の女性は排除されてしまう。その伝統を継承した武侠映画でも、本物の女性を出すとしても、メインはあくまで活劇であり、はっきり言えば添え物のような存在でしかなかった。だが、充分アクションをこなせる女優も多く、それに目を付けて主人公に抜擢した。これは大きな変化となった。

 二つ目に、物語をハリウッド形式、有り体に言えば西部劇の要素を取り入れたこと。ここで登場する剣士達は、それまでの名誉や家のために戦うのではなく、むしろ自分の仕事をこなすために戦うのであり、この形式もこれまでの武侠映画には全く無かった、中国の伝統から離れた物語が展開していく。茶屋での剣士達による腕試しは西部劇の酒場での決闘を思わせるし、インの活劇の前に茶屋で決闘を行うのは以降の武侠映画の基本になっていく。

 三つ目に、それまで京劇がメインだった活劇を、今度は集団のダンスシーンを参考にしたこと。これによって一人対多人数、あるいは多人数対多人数の活劇を流れるように演出できるようになった。

 これらは見事に後の武侠映画に残っていったし、しっかりフォーマットを作り上げてくれた。

 その辺実に上手い作品だとは思う。のだが、本作の場合、致命的なところがストーリーの弱さ。前半部分は明らかに金燕子が主人公だったのに、中盤からは完全に酔侠メインになってしまって、金燕子は完全に置き去りにされてしまった。そのために完全に物語が二分割されてしまい、金燕子に関してはラストまでなんのフォローもされてない。それと、ラストシーンは完全に蛇足では?兄弟子を許して去らせるところで終わらせても全く問題なかった気がするし、最後にあれだけ残酷に兄弟子をぶち殺す必要があったんだろうか?

 中盤までは良いのだが、後半が月並み以下になってしまったお陰で、かなり散漫な物語になってしまった。

(評価:★3)

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