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[コメント] 父、帰る(2003/露)

母、暢気だね
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 とても美しく、そして残酷なロシア製の親子の物語。

 話自体はとてもシンプルなのだが、その内容はかなり難しいというかややこしい。そのややこしくしているのは結局名前のない“父”と呼ばれる人物の心が最後まで分からなかったからなんだろう。正直な話、観ていて、このキャラに感情移入して良いのだか悪いのだか判断が付かず、更に“父”の探していた宝が一体何であるのかも最後まで明らかにされていない。最後の最後まで中途半端に終わってしまったと言うのが正直な感想である。てっきり最後に父は子供を抱きしめ、探していた宝は子ども達のために置いておいたものだよ。というオチが付くものだと思っていたため、それが裏切られてしまった。

 ただ改めて考えてみると、実は本作の目的は親子の関係の物語ではなかったのかも知れない。

 本作の目線というものを考えてみると、それは徹底して弟のイワンの見たものとして作品は作られている。彼の目から見たものが謎であるならば、それは謎のまま残しておかれてしまう。そう規定して考えてみると、これは親子の関係ではなく、イワンという子供の一種の成長物語として考える事が出来るかも知れない…成長というには重すぎるけど、子供の目から見た世界を最後まで貫いた。と言うべきか。

 オープニングの部分でイワンはどうしても水に飛び込めない子供として描かれている。しかも本人はそれが屈辱であるらしく、そんな高い場所にずーっと佇み続けている。それが最後の最後にダイビングを敢行した。これは一種の彼にとっては、一つの壁を乗り越えたと言う事にはなると思う。

 ただ一方、一つの壁を乗り越える最、取り返しの付かない事をしてしまっているのも事実。だから一概にこれは成長物語という訳でも無さそうだ。

 あるいは本作は“分かり合えない人間が犯してしまう罪”という題材なんだろうか?それは相手が分からないまま、一歩踏み出す事の危険性であり、子供というのは暗喩として用いられているのかも知れない。

 ただ、映画として考えるなら、こんな中途半端にせずに、それこそ親子の関係に収束してほしかったものだね。なんか中途半端な気持ちになってしまうため、評価は控えめ。

(評価:★3)

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