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[コメント] スクール・オブ・ロック(2003/米=独)

視点の面白さとベタさ加減、キャラクタの成長。色々と詰まった作品なので、多くの世代の人達にご覧になって欲しい作品です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ロックを描いた作品は数あり、先生と生徒の関係を描いた作品も数多くあるが、これを合わせたのはこれが初めてだと思われる。実際ロックと学園ものは方向性が違う。ロックは破壊するもの。学校は作るもの。と言う住み分けになっていたようだった。

 学生側の立場として反抗の象徴としてのロックではなく、監理する側からのロックとは完全な視点の逆転となってる。

 確かにかつてロックは若さを象徴するもの。反抗の旗印として考えられていた。口では立派なことを言いながら、その実争いを続けている大人達に対し、反抗してみせたり、その馬鹿さ加減を笑ってみせたり、社会の不安を叫んだりした。ここでのブラックはそういう世代を代表しているとも言えよう。大きな汚さに対する反抗の手段としてのロック。故に破壊的なものとなる。

 しかし現代は変わっていつた。子供達は表面上従順に、しかし極めてシニカルなものと変わっていつた。

 だからここでのブラックと子供達の関係は、完全に逆転している。なんせ先生の側が反抗者で、子供達の方が従順なのだから。

 まずこの逆転の発想がユニークな点だったのだが、前提が面白いのみで終わるのではなく、その後のストーリー展開もかなりしっかりしている。

 金のため嫌々始めたはずの教師生活が、様々な触れ合いを通し、何より子供たちの生の姿に触れ、本物の教師となっていく。

 一方、大人びた、醒めた視点しか感じられなかった子供達が、いたずらん覚え、子供っぽさを取り戻していく。

 最初あれだけ無茶苦茶に見えたストーリーが、ここで大変オーソドックスな作りへと変えられていく。

 しかし、この物語はそこでも終らない。なにせブラックは本物の教師ではなかったのだから。

 ここで更に物語は再び逆転。今度は一致団結した子供達がブラックをひきまわす事になる。ブラックの身勝手から始まった彼の夢が子供達の夢に変わった瞬間である。ここでこれまでのベタさが活きてくる訳だ。

 ここにおいて成長したのはなにも子供達だけではなく、むしろブラックの方であることが示される。彼がライブで選んだ曲が自分の持ち歌ではなく敢えて生徒の作った曲だと言う点にそれが表れているだろう。

 ブラックが最初に聴衆に飛込んだ時、誰も受け止めてくれず、最後に跳んだ時は、しっかり受け止められたのは、単にノリが良かったからではない。受け止めたい。と言う雰囲気をブラックが出していたからだろう。この中で一番成長したのはブラックに他ならないのだから。ここにおいて教育とロックが合致する。主人公の成長として。

 もう一つ。ロックにはただステージに立っている人たちだけでは駄目で、それを取り巻く数多くの裏方が必要で、クラスのメンバーがそれぞれの役割をしっかり担っている描写があったのも面白いところ。誰もはじかれた子供はいない。全員を共犯者にする必要があったからだったからだが、例え不満があっても、それを受け止めてくれる先生がいる。この点も重要な点だっただろう。

(評価:★4)

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