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[コメント] 女番長 野良猫ロック(1970/日)

70年という特殊な時代を切り取った作品としては充分鑑賞に足ります。物語はどうしようもないという問題はあるにせよ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 さすが「カルト」と言われるのは伊達ではなく、このシリーズ全部お世辞にもまともな作品とは言いがたいのだが、この1970年に、まさにその時代を切り取って作ることが出来た。というそれが最も重要な点だろう。1970年というのは日本史においてもかなり特異な年だった。大阪万博で盛り上がる一方、1960年に締結された日米安保条約の改訂を阻止すべく学生運動が盛り上がりを見せ、更にそれらの風習に背を向け、独自の宗教観さえ生み出していく者もいた。この時代に青春時代を送った人は、その後の人生を色々と変えられてしまった人も多いという(と言うか、その下の世代がどれだけその勝手のお陰で苦労してると思ってる!)。

 特に当時の新宿はまさにカオス状態で、独特の雰囲気を持っていたそうだが、その雰囲気を現代で垣間見せてくれる格好の素材として、本作は貴重なのだ。

 一本目の本作は一応ちゃんとしたストーリーらしきものはあるのだが、色々詰め込んでみました。と言った感じで、まとまりが無くてピントはぼけまくってる。自分たちで勝手に盛り上がっている内にいつの間にか殺し合いにまで発展していく物語も強引すぎ。パワーだけで持って行ってみました。と言った感じ。終わり方も厭世観漂いまくり。これが70年という年の持っていたパワーなのかも知れない…でも、今改めて考えてみると、これってタランティーノが好きそうな作品だな。特に初期のタランティーノ作品には同じ雰囲気を感じ取ることが出来るぞ(梶芽依子の大ファンだって言うのだから、本作も観てた可能性あるね)。本作を洗練したものが『レザボア・ドッグス』(1991)であれ、『パルプ・フィクション』(1994)であると言えなくもない。

 大ブレイクした梶芽依子は(この年は本シリーズを含めて9本もの出演作あり)、後の暗さよりもやけっぱちな雰囲気が漂い、これはこれで彼女の魅力の一端であることを再認識。相棒の和田アキ子は…ほとんど棒読みにしか聞こえないんだけど、よくこれを主人公に据えようと考えたもんだ。

 カオス感溢れる作品が好き。という人には絶対にお勧め出来るのだが、映画に物語を求める人には薬にもならない。

(評価:★2)

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