中には大笑いのネタもあったが、世間様の大絶賛の嵐の理由ははっきり言って不明。しょうもないネタが観たければ、ジャッキー・チェン様の映画を観れば満足できると思われます。まぁ、『デリカテッセン』の理解を拒絶するような雰囲気から脱却し、歴史に残る売れ線の作品ができたということでご祝儀的に３点。

アカデミーが終わって、この作品が外国映画賞を取れなかったことに私は密かに安堵しました。これがこの一年に英語以外の言語で製作された映画のトップだと世間的に認定されたら私は自信無くすところでした。蛇足ですが、外国語映画賞受賞作の『No Man's Land』は誰しも必見です。特に『アンダーグラウンド』に心を動かされた方におかれましては、観ないと後悔します。

結局、『レザボア・ドッグズ』のレビューでも同じ趣旨のことを書きましたが、「これをおしゃれだと言うことがおしゃれ」というような感覚を覚えている一般大衆、或いはそういう風に捉えることを強いているメディアの存在が見え隠れしていて嫌なんですよね。ただ、あざとい映画ではないことが救いです。まさか監督本人もこの作品が日本でまで大ヒットするとは死んでも思わなかったことでしょう。

極めてシビアなことを言えば、僕自身は日本のフランス語が分からないほとんどの聴衆が、同じくらい庶民だと仮定し得るフランスの大衆と同じ感覚でこの作品を評価し得る立場にあるとは思えません。

『千と千尋』が外国語訳されたり、字幕付で放映されたとしても、日本語のニュアンスが日本人にしかわからないことと同様です。そのことと、フランスの香りを堪能することというのはちょっと違うのでその点まで否定するつもりはありませんが。

最後に一言毒を吐くと、主人公の女の子がかわいいってのは、はっきり言って嘘だと思うよ。あんな年齢不詳で厚化粧で根暗で優柔不断な女がかわいいはずがない。みんな自分よりダメな女の子、或いは自分のダメなところを映画の中に見出して、根拠のない優越感か安心感かなんだかよく分からない感情に浸ってるだけ。もっと自分を磨きましょう。

（2001.10） （2002.5.7全面改訂）