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[コメント] 宣戦布告(2002/日)

上映時間を絞る為というのは解るが、”何故?”が端折られ過ぎていて、原作を読んでいない人には不親切極まりない。
アルシュ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







■何故、”北”が潜水艦を座礁させて特殊部隊を潜り込ませたのか?

まぁ、これも原作でもはっきりさせていないが、”北”はこの様なシナリオを想定しており、過敏に反応をする事によって、軍事的恫喝をかけて、以後の外交で有利に展開する為ではないかと思われる。と言う旨は書かれていた。

■何故、唐突にも多くの周辺諸国をデフコンレベル1に迄引き上げアジア・クライシスに繋がっていったのか?

原作では、

中国は十数人相手に七千人の”陸軍”を動員した時点で、「信用してはならない愚かな国」として臨戦態勢に入っている。

”北”は過敏に反応したふりをして、「救いを求める11名の同志を虐殺すべく・・・」と言うように日本に非難声明を発表、戦争体勢に入る事を明言する。

日本海では”北”の52隻の潜水艦が出撃している事。それに対して日本はイージス艦他自衛隊艦艇が17艇出撃、P3Cも12機が哨戒の為出動。

この様に、各国の臨戦態勢を高めていく描写が全体の3/4程度から徐々に進み、最後には相手の出方に過剰反応を示し先制攻撃に備えるという恐怖の連鎖反応が書かれている。こういった部分が映画では唐突だった。

■「ディスインフォメーション(偽情報)」という台詞だけでは、”北”や周辺諸国があっけなく手を引いた事に対して説明不足

原作では、

日本に潜伏する”北”の工作員に「アメリカのステルス戦闘機2機が総書記の公邸を爆撃する」という指導者ニュートラライズ(排除)の欺瞞情報を内閣情報調査室が、土橋防衛庁事務次官から愛人経由でパク・アンリーへ流したから。”北”は首都防衛のために兵力を帰還させる命令を出したため事態は沈静化する。

ここが一番のキーポイントなのに映画はホント唐突。

■現行法制では、有事に対する日本の対応の手枷足枷があまりにも多いのだが、具体例が少なすぎる。

道路や橋梁が壊れていても勝手に修繕することは出来ない。陣地構築には、土地占有の許可、土石採取の許可、工作物新築の許可、土地掘削の許可が必要。一個師団を投入するにも、陸上競技場20面分の敷地が必要。無線周波数帯を占有するためには電波統制も必要。野戦病院を作るにも建築基準法、医師法、病院法のクリアが必要、等々。こういった問題に対して特例処置を講じようとしたら、法改正だけで1ヶ月かかる。

これを映画では「塹壕を掘るにも法改正が必要」程度では、あまりにも具体例が少なすぎる。こういった日本が抱えている「危機管理の不備」を具体例によってより明確にして欲しかった。

この映画の敵は”北”ではない。人の命より法律の方が大切な「お役所仕事」が敵なのだ。

だからといって日本の右傾化をさせる為の作品とは思えない。発射からわずか8分でやってくるノドンに、1ヶ月も右往左往されては国民がたまったものじゃないでしょ?あちらでは常識が通じない狂人が権力を握っているのだから。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ilctr けにろん[*]

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