[コメント] 二十歳の原点(1973/日)
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彼女はワンゲルに所属しており、原作では登山がそれなりの比重を占めていたように思うが、この映画ではあまり触れていないのはなぜだろう。だからなのか、肝心のラストで「旅に出よう」と言われても原作を読んでいない人には繋がらないのではないだろうか。
あと、最後の最期に見せる表情にも疑問が残る。恍惚とした表情から一転、驚愕の表情に変わったままエンドマークとなるのだが、製作者はもしかすると、彼女は睡眠薬で朦朧としたまま踏み切りに迷いこんで事故死したという解釈の余地を残したかったのだろうか。だとしてもあれではあまりにも強烈で、後味が悪い。僕なら恍惚とした表情のまま暗転させて終わらせる。それがせめてもの救いというものではないか。いや、そもそも実在の故人の最期の表情をアカの他人が勝手に想像して映像にすることなんて、傲慢というものだろう。
とはいえ、「旅に出よう」をモチーフとしたラストシークエンスは非常に見ごたえがあった。四人囃子による音楽は今聴くとややバタくさくはあるが、列車の光輪がしだいに大きくなるにつれて盛り上がるところは、焦燥感とも悲壮感ともつかぬなんともいえない気分に襲われた。(「革命」が唐突に流れるところは失笑した。)
いずれにしろ悲劇的ではあるが、詩の素晴らしもあって、この作品は僕の好きな『智恵子抄』と並べていいぐらい好きな作品となりそうだ。
角ゆり子もとてもよかった。彼女のクスクス笑いは癇に障り、ケラケラ笑うのは少しブキミですらあるが、彼女の笑いは若者特有の不安を隠すためにする笑い方そのものであった。
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