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[コメント] 山口組三代目(1973/日)

東映の汚点。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







現役の組長をヒーローとして描いてしまった代償は高くついた。東映はもとより、映画界の地位すら危うくさせたのではないだろうか。この作品を見て、全国で抗争中の対立組織はどう反応したのか?またいったい何人の若者が山口組の代紋に憧れて身を預けていったのか?

この時点で三代目は現役である。8年後に病死というヤクザらしからぬ往生をした後の凄惨な事件を国民は忘れてはいない。4代目を決めずに死去した為に内紛が起こり、4代目組長を竹中が襲名するや、大量の離反者が一和会を結成して全国的な抗争事件が連日新聞に報道された。山一戦争である。

日本最大の暴力団を35年間もの長きに亘ってカリスマとして君臨した男を「伝説」として映画化したい気持ちは充分理解できる。任侠を背負ってきた東映としては、いつかは行き着くべきものだったのだろう。

だが、存命中で現役の男を描くのは社会通念上からみても、あまりにも無茶ではないか?『人生劇場』で「任侠道」という金の鉱脈を発掘した東映は、それまでに数々の架空のヒーローを作り上げてきた。花田秀次郎緋牡丹お竜に観客はロマンを感じ支持をした。しかし、本作の主人公はどんな脚色をされようとも観客や本作を観ようとも思わぬ一般市民からの支持は受けられないと東映は判断しなかったのだろうか?

映画の中で、いくら主人公の男気や侠気を描いたところで、現実の世界(繁華街へ出れば一目瞭然)での彼等のしている事を知らない市民はいないのだ。

いったい東映は誰に向けて本作を制作したのか?いったい何を訴えたかったのか?作品自体もレベルは低い。主人公の前半生をただ追っているだけ故にヤマがなく、最初の殺人事件で有罪判決を受けるところで唐突にエンディングとなってしまう。

相撲取りへの傷害、船員組合への殴りこみ、反目となった菅原文太との斬り合い。つまり何のことはない、最後の文太以外は皆カタギの衆へ刃を向けただけのことではないか。

価値がない。どう考えてもこれは映画化する価値のない話である。それどころか東映は自らを貶める作品を世にだしてしまったということである。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得[*] Myurakz[*]

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