初監督にしては頑張っている。しかし「省略」の編集テクニックなど随所に北野武の影響が色濃くみえてオリジナリティは感じない。

　「生きていたらきっと良い事がありますよ」「いつ？いつ良い事が起こるんだよ」「…いつか判らないから生きていくんですよ」／「存在する意味を考えた事があるか？」／「会社ってなんなんでしょうねぇ…」など、ムズムズするような幼稚な死生観が満載。某局の中高生の討論会レベルに感じた。

　一人だけ生きたがっているヒロインが、もっと「生きていく事はエネルギーを放出する事。そのエネルギーは“知る事”“成長する事”から得られる。つまり生きていく事とは人として成長し続けていく事なんだ！」ぐらい主張を持って生きたがる設定なら良かった。なのに彼女にしても、なんとなく今まで嫌な事もなかったので、別段死にたくないだけ…というように感じる。死にたがる人達も生きたがる人も“なんとなく”現状に流されてそうしたがっているだけ、というのが極めて日本人的な発想に思えて嫌悪感を感じるのだが…。監督がそういう人達を否定してるなら逆に評価が上がったのだが、否定も肯定も感じなかったので、単に面白いテーマとして自殺ツアーを扱っただけなのかもしれない。

　ダンカンのセンスはまだ切り捨てるには惜しい物があるので、次作に期待。★2.5。