スタンリーが彼に荷担せざるを得なかった状況は割と丁寧に描かれていて、非常によくわかります。いくら別れたダンナだからといって、あんな全人格すべてを否定するような言い方をするアル中女の手元に娘は置いておけない（ポルノ王であるところの今の旦那には罪はないとも思うが.....ワタシって女性不信？）。ワタシが同じ立場ならそうする（かも知れない）。

　ガブリエルの愛車、ＴＶＲタスカンスピードシックスは、悪役カーとして非常にクルマのキャラに合っていた。ナイスチョイス。

　冒頭のガブリエルのセリフに出てくる「リアリティ」とはどういうことなのか？派手な爆発やＣＧのシーンが「リアル」であると言っているのではないことは一目瞭然。狂信的パトリオティズムの持ち主、いわゆる悪役ガブリエルはまんまと95億ドルをせしめ、とりあえずの善玉スタンリーは娘との生活を手に入れました。お互い望むものを手にしたわけです。奪ったお金も特段誰かのものというワケではありません。アタマに？？？がいくつも浮かびますが、ある意味大団円のハッピーエンドともいえます。ガブリエルの動機には反発しつつも、テロリズムで命を落とす人々は「現実」に存在し、「何とかならないのか？」と思っている自分もいます。犯罪の手段に使われながら、娘との生活を夢見るスタンリーに感情移入する自分もまたいます。もちろん「暴力は暴力を産むぞ」と思うのもまた事実。現実（リアル）とは従来のハリウッド映画にありがちな善悪二元論的展開にはくくれない、くくらないところに「リアリティ」があるとガブリエル＝制作者はクライムアクションの衣を着せて語っているのではないでしょうか。

　つかぬ事をお尋ねしますが.....最終パスワード、「ｖｅｒｎａｍ」の意味は？