篠田三郎はモックンそっくりですなあ。あ、モックンが篠田三郎に似てるのか。

『炎上』に比べて、原作へ真っ向勝負を仕掛けていったのは評価できるが、やはり観念の小説を映像化することには限界があり、掘り下げが浅くなってしまったことは否めない。せっかく「行為」か「認識」か、という『炎上』では触れられなかったテーマまで行き着いたのであるから、登場人物のセリフとして語らせずに、もっと深めてもよかっただろう。

全体の雰囲気はやはり直前に作られた『本陣殺人事件』の世界を踏襲している。個人的には好きな雰囲気の映像だ。 そこで繰り広げられる人間の生き様や苦悩の中に、どうしても外せない「性」への関わりが描かれるのであるが、これが回数として多めで（特に母親の性行為描写の登場回数は多すぎる）、ともすると「エロ」の領域に入り込みかねない危険性がある。観念の世界を描くのか、情念の世界を描くのか、それとも興行的なサービスの一環なのか、ちょっとその辺りが曖昧であったように感じる。この点が気になったところ。