随所にさりげないいいシーンがある。たとえば、若い２人が堤防のところで語るシーン。自然さに好感が持てる。あるいは、妻が不治のガンと宣告されて病院のベンチで座る村田、それを見ている若い看護婦。会話はない。実際もこんなもんだろうと思える。ユートピア・コーポレーションもなかなかうまく描けている。いかにもありそうだ。私もライフスペースで洗脳研修受けたけど、ああいう人たちの匂いが良く出ている。

ただ監督の思いを伝えようとして、説明しようとするとつまらなくなる。たとえば、エンゲージリングのために風見章子の指の大きさをはかるところ。赤い糸を持ち出して二重に輪を作ったまではいいが、あれをどう保持したんだろうか。丸い糸の輪を覗いているシーンでカット。あとは別の進行になる。はたまた霊感商法にやられて、精神に変調をきたしたシーンがもろべたな「あなた！」お国のために頑張って、みたいな演出だと身が引ける。

始めの太平洋戦争のシーンとラストの東映任侠映画ばりの道行きももう少しなんとかならなかったものか。プライベートライアンとまでいかなくても、処理の仕方があるように思った。きっと予算がなかったんだと思う。若い人と老人の間にエピソードを重ねて同時に描こうとした努力は買いたい。

ところで吉祥寺バウスシアター２で見たが、入り口の前に立て看置いて、新聞の紹介記事を張るのはやめて欲しい。見る私も悪いが、シネスケならネタバレ投票がガンガン入るような内容だった。読まなければ良かった、と思ったことが再三あった。賛否両論な衝撃のラスト、なんて書かないで。途中から先、読めちゃうから。１０人／定員５５人。おりからの雪模様と相まってなんだかウソ寒くなる観後感でした。2002.1.5