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[コメント] たそがれ酒場(1955/日)

舞台となる酒場の造りが面白い。木造の二階。広いフロアに飾り気のないテーブルが無造作に並ぶ。奥の中二階の張り出しにマイクとピアノ。その下あたりに常連客が陣取るカウンター。店の入り口はフロアの中ほどにあり階段をのぼってきた客はいきなりそこから現れる。
ぽんしゅう

元軍人の上官と部下。左翼学生と教授。街のチンピラたち。店に集まる客たちは終戦の混乱からようやくその出口に差しかかった時世を反映するように、ギラギラと良くも悪くも混沌、騒然とした。そんななかで過去の恩讐や悔悟を抱えた音楽家や画家は文字通り「過去の人」を受け入れ、二人の若者が「過去のしがらみ」からは解放される。

本作が公開された1955年は終戦から10年を経てGDPが戦前の水準を上回り、翌年の経済白書で政府が「もはや戦後ではない」と宣言した時期にあたります。この後、日本は経済成長期へと突き進みます。そんな「時代の終わりと始まり」の空気をとらえて奇しくも「次の日本」を予見したような映画でした。

ひるがってこの30年、微動だに経済成長しない今(2023年)の日本。いま再び、時代のお荷物と化した(私のような)高齢者は過去の負債を引き受けて、将来の日本のために「後進に道を譲る」べく“覚悟の時代"が来ているのではないかと思います。そんなことを考えました。

(評価:★4)

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