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[コメント] すべての夜を思いだす(2022/日)

20万人規模の人口を有しながら多摩ニュータウンの街中は人の気配が希薄だ。だがその風景の背後には50余年に渡る人の営みの機微が無形の歴史として流れている。その「時間と記憶の余白」が映画の“ゆとり”となって通底する。ほの見えるのは三人の女性の心の機微。
ぽんしゅう

失業中でありながら、一見マイペースで余裕ありげな独身中年女性の知珠(兵藤公美)だが、彼女は確実に過去の「実績や関係」と「残りの時間」を失いつつあることにまだ気づいていないようだ。地元のガスの検針員としてルーティンをこなすアラサー女性の早苗(大場みなみ)は、公私ともに「安定のなかに宿る停滞」の気配に気づき始めているようだ。幼時から地元で育った女子大生の夏(見上愛)は、まだ人生のとば口にいながら「その地の抜き差しならない呪縛」を抱え込んでしまったようだ。

私の感想はすべて「ようだ」で結ばれる。清原惟監督は、そんな"機微"をニュータウンの「時間と記憶の余白」を使ってスクリーンのなかにほのめかす。PFF出身の32歳、長編は二作目だそうだ。次の作品が楽しみです。

(評価:★4)

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