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[コメント] 猟人日記(1964/日)

TAKE5
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前後半で視点が入れ替わる構成の妙。ヒッチコックばりの面白さ。原作は戸川昌子の江戸川乱歩賞受賞作。幻想怪奇もの・本格推理ものをドッキングさせることで各々の欠点(前者に於いては犯罪リアリティの欠如、後者に於いては文学性の欠如)を克服、女性ならでは哀しみとロマンチシズムを盛り込みオリジナリティ溢れる傑作に仕上がっている。(「猟人日記」中の語彙感覚などは正直、好みでないが。)殺しのメロディに「流浪の民」をチョイスするあたりシャンソン歌手の一面も持つと言う原作者ならでは。ロシア風の陰鬱な調子が作品の雰囲気を盛り上げる。また原作者自ら演ずる女流画家の妻が描くシュールレアリスム絵画も雰囲気醸成の重大要素。一体誰の手によるものか。何れにせよ絵画に造詣の深い中平の鑑識眼もよるだろう。中平と云えば稲野和子の絞殺体は如何にも彼らしいフェティッシュな魅力に溢れていた。まるで贈り物のような。そして骨なし赤子。問題のショック描写。乱歩原作「一寸法師」と共通の哀しみに溢れている。中平とのコンビの多い黛敏郎の音楽。サスペンスを煽る不気味な電気音楽。そして5拍子で刻まれる無人アパートの水滴。今回も冴え渡っている。仲谷昇の知性的なエロティシズム。これが同年の『砂の上の植物群』『おんなの渦と渕と流れ』と続いていく。その総てが素晴らしい和製愛欲映画の傑作だ。

(評価:★4)

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