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[コメント] PTU(2003/香港)

児戯と本気汁。
町田

昇進間近の刑事がけん銃を奪われる。警察組織が一丸となってそれを探す。タイムリミットは夜明けまで。

在り来たりな筋である。50年前ならともかく、今更、何の面白みも感じさせない話である。

それを、ここまで面白く魅せるジョニー・トーにセンスに脱帽。

冒頭からいきなり、在り得ない馬鹿馬鹿しさを混入させ、しかもそれを一片の照れも無く、最期まで撮り上げて見せる。

最近のアクション映画ってのはみんなどこか照れている。タランティーノ影響下の作家達なんてのは特に皆そうだ。自らの子供っぽい憧れや幻想、マニア性などを、頭を掻きながら表出する彼らの姿勢は、ある種のスノッブさに通じるし、ともすればとても嫌らしい。

トーのこの映画はそれとは全く無縁だ。

ヤクザの息子は、娯楽映画的には、焼き肉で殺される必要があったし、その死体は、物語の便宜上、人気の無い路地で発見される必要があった。その「距離」を如何にして埋めるか?

凡百の作家ならここで、魅力的な食堂のシーンを泣く泣く削ったり、余計な人物を追加したり、尺を延ばして説明的なシーンを挿入するところだが、ジョニーはそうしない。

娯楽映画に儲けられた「90分」という暗黙の制限時間(タイムリミット)の中で、そんな余計なことをしている暇は無いのだ。

息子は走った!包丁で胸を刺し貫かれたまま。くそっ、やられた!病院へ急がなくては!

児戯と本気汁。娯楽プログラムピクチャーに本当に必要なのは、その二つだけだと思う。上っ面だけの「クール」だとか、音楽・衣装センスだけの「スタイリッシュ」だとか、もうそんなものはアクション映画にはいらんのである。

(評価:★4)

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