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[コメント] コール(2002/米=独)

冒頭の意図的露出過多、手ブレ、ジャンプカットなどカメラが煩過ぎ僕には何も見えません。しかめつらしい音楽も厭。これがスタリッシュなんて呼ばれるようならこの世は闇だ。スリラーとしては中盤まではかなり魅せるが
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「携帯会社の副社長」登場以降は良くある米産アクション映画。『コン・エアー』とかあの辺のジャンルに早代わり。

そのアクションの、キモとなるべき小型機エンジン停止スタントが単調な構図と凡庸な繋ぎで全くの不発。それも二度とも。ガチャガチャカメラ動かしておいて肝心なトコはこれだものガッカリだ。

着陸後の銃撃戦に於いても、描かれる空間に立体感・距離感がない、つまり各キャラ(各車両)が何処に配置されているか不明確であるため、迫力はあっても臨場感は皆無だった。

脚本について。

三人同時誘拐、というアイデアは秀逸である。問題は(1)それをどう展開するか(2)ドラマにどう活かすか、そして(3)どのような方法でそれを打破するか、だったと思う。

(3)に関しては上記の通り。”友人に携帯会社副社長がいた””犯人がポケベル(スカイテル)の存在に気付かなかった”とは余りに強引、失笑するに価する。こういうのをご都合主義という。

(1)について。犯人と被害者、主要6名それぞれの視点立場からのトラブル・シューティング。ベタだが巧みな場面転換でかなり魅せる。とりわけ、シャーリズ・セロンがベーコンの”道具”にメスを押し付けながら従兄弟に電話、しかし間が悪いことに携帯はダコタ・ファニングが小屋の外に持ち去ったところで通話出来ない・・・このシークエンスが本作最大の見せ場であったと思う。原作者が脚本を書いているだけに場面転換、構成力は流石。

(2)「復讐」というヒューマンな犯行動機は全国系らしいといえばらしい。以前4件の動機がなんであったのかは謎だが。予行練習だった、ということだろうか?ともかく今回のベーコンの犯罪動機は明確である。しかしコートニーが亭主を盲信する理由は?(ブルイット・テイラー・ヴィンスが演じた従兄弟のマーヴィンはドラマの中核に食い込んで来るキャラではないのでここでは問わない)ここらあたりが不鮮明のため彼女の心情変化にイマイチ合点がいかない。彼女も性欲的な女でいい男と寝たかった、即ちスワッピング強姦願望のある変態夫婦、という設定は興行的見地からNGか?コートニーという配役はその為のものだと思ったのだが。この女は最期の最期、一体何をしたかったのだろう。

「医療事故」という時事的、社会的なサブテーマへの踏み込みも不足している。こういう風に云うと、今時そんなこと云うのは無粋、なんて思われるのかな。なにも『砂の器』ほどやれといってるわけじゃないんだが。

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グレッグ・アイルズの原作『24時間』を読むと上記の疑問、不満は全て氷解する。原作の舞台はミシシッピの田舎で、ここでは携帯電話の逆探知装置が完備されていない。ヒッキー(ベーコン)の設定した「30分に一度電話」というのはこれを踏まえた上でのものだ。映画では舞台はオレゴン州ポートランドに移っており、その為、従兄弟の隠れ家は直ぐに発見される。

また、ネタバレになるので深い言及は避けるが、原作では誘拐犯3人それぞれの暗い過去について触れられている。特に従兄弟のヒューイ(映画ではマーヴィン)のエピソードは少女アビーとの関係性、ラストにまで関与する重要なものであったが映画ではかなり周到にはずされている。木彫り熊の人形はその名残だが、あれだけでは意味が殆ど解らない。

シェリルの年齢設定を上げ、帝王切開のエピソードを汲み込んだのは、アイデアとしては秀逸だが、のちにヒッキーを裏切る運命にある彼女には少々重過ぎる設定であったように思う。

(評価:★3)

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