限定された環境で追いつめられるというと、まあ『スピード』だとか『新幹線大爆破』などが思い起こされるが、これはでんわボックス。しかも今時電話ボックスなどそうあるものではない。その限定された環境で切るに切れない電話という匿名性が浮き立つのだ。切るに切れないのは電話ばかりえはない。妻や浮気相手。つまり彼の軽薄な生き様そのものに対する挑戦。その軽薄さとの縁を切るよう電話相手（脅迫者）は求めてくるのだが、彼はなかなか踏ん切ることができない。その葛藤につけ込んで相手は徹底的に彼の人格を貶めようとする。

周辺には警察、野次馬、マスコミなど雑踏となって彼を追いつめる。この状況で次第に彼は恥も外聞もなくなった状況にさらされる。

面白い。面白い。

しかしである。

ラストキーファー・サザーランドが姿を現した時点で萎えてしまった。それまでの彼の”声”の演技が素晴らしく見事だっただけに、どんでん返しはともかくサザーランドの姿が画面に”明確に”あらわれたことでこの映画は失敗に終わっている。